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 ライフサイクルとストレス〜我が身を振り返って


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処暑が過ぎ、朝晩涼しくなりましたが、もうしばらく日中は残暑が続くようです。

夏の疲れが出やすい時期なので、睡眠と栄養をしっかりとって体調を整えて下さいね。


さて、今日は、ストレスに備えられるようライフサイクルのお話をしたいと思います。



発達心理学におけるライフサイクル理論

エリク・H・エリクソンは、「人は年齢を基準とする時期に応じて生涯を通して発達する」と考え、人生を8つの段階に分け、それぞれ解決すべき発達課題と達成できないときに陥る危機について心理社会的発達理論として提唱しました。


(時期年齢)         (心理的課題)

乳児期 0〜1歳半  基本的信頼感 対 不信感

幼児期初期 1歳半〜3歳  自律心 対 羞恥心

幼児期後期 3〜6歳    自主性 対 罪悪感

学童期 6〜13歳    勤勉性 対 劣等感

青年期 13〜22歳      アイデンティティ 対 アイデンティティの混乱

成人期初期 22〜40歳    親密 対 孤立

成人期後期 40〜65歳   世代性 対 停滞

老年期 65歳〜      自己統合 対 絶望


この中で注目すべき課題は

乳児期の基本的信頼感の確立

青年期におけるアイデンティティ(自我同一性=自分が自分であること)の確立です。



基本的信頼感とは

大切に養育してくれて愛情や甘えの欲求を受容してくれる養育者への信頼感を通して、自分という存在を肯定的に捉え、外界は信頼するに足りるものだという感覚を持つことです。

人に対して信頼感や安心感を持てることで、生涯にわたって情緒的に安定して過ごせるための土台が作られます。

一方、乳児期に得た体験により基本的信頼感が希薄であると、人に対して不信感や不安感を抱きやすく、対人関係が不安定になりストレスを感じやすくなります。

乳児期には、養育者が自らの生理的欲求をかなえてくれて(泣くと授乳やオムツ替え、抱っこをしてくれて)安心できるという体験が重要になります。



アイデンティティの確立

アイデンティティは、自我同一性ともいい、自分がありのままの自分としていつづけたいという一貫性と、社会的に役割を果たし、同時に社会に認められているという自信、つまり「これが本当の自分」という概念です。

この時期に同年代の人との間に親密な関係が生まれず、社会集団の中で自分の立ち位置や役割がわからなくなった場合、自己を見失いやすく、アイデンティティの危機と呼ばれます。

現代は、社会的要因(価値観の多様化や不安定就労の増加など)によりアイデンティティの獲得が遅れることも多く、青年期が延長しているとも言われます。自立できず依存が長引き、引きこもり、パラサイト・シングル、フリーター、ニートといった状況は、社会的問題にもなっています。

青年期は、親からの精神的な分離を図りつつ、経済的にも自立する準備をする時期であり、自分自身を見つめながらアイデンティティの確立を行うことが重要なテーマとなります。




診療していて思うことは、青年期の親子関係の再構築についての重要性です。ピンチはチャンスというように、青年期の子どもが何らかの悲鳴をあげている場合(心身不調や行動化など)親子関係を見直すいい機会と捉え、適切に対応することが必要です。

簡単に言うと

親が強すぎると子が自立しにくい。

今まで親に従順であった我が子が、自ら意見を述べたり反抗的態度をとる際、つい怒ってしまったり親の意見を押し付けたくなります。親として社会的教育的視点から意見を伝えることは必要ですが、子どもがアイデンティティを獲得するための邪魔をしないようにしたいものです。

親や周囲の大人達は青年に対し、自立しようとしている一人の人間として尊重し応援してあげられるといいのではないでしょうか。


ライフサイクルにおけるメンタルヘルス不全に陥らないためには

自ら各時期の発達課題をクリアしてきたか振り返りつつ

我が子が心理社会的危機に陥っていないか考え

ライフイベントを上手く乗り越えていけるといいですよね。





そして、個人と同じように家族にもライフサイクルがあり、そのステージにおいて発達課題があります。


家族ライフサイクル

1、独身の時期−家からの巣立ちと家族の基盤づくり−:職業を選択し経済的に自立する。同年代と親密な仲間関係を持つ。親と適切な関係を保つ

2、新婚の時期−二つの異なる家族システムの結合ー:幸福なイメージの時期であるが、家庭生活と仕事のバランスをとらねばならず、また、価値観や家族観の違いに直面し葛藤が生じやすい。夫婦の信頼関係を形成するためにはアサーティブな姿勢が重要

3、乳幼児を育てる時期−幸せとストレスの狭間−:子供の誕生は至福の喜びをもたらすと同時に、心理的、肉体的、経済的なストレスをもたらす。家事育児の分担や子育ての方針などで衝突しやすい。解決しつつ親としての役割を務めながら夫婦の絆を保てるとよいが、うまくいかないと悪化する危険性がある

4、学童期の子供を育てる時期−生活の広がりと境界の維持−:子供の能力や個性に合わせた育て方が重要であるが、教育面で夫婦の対立が起きやすい

5、思春期青年期の子供を育てる時期−健康な家族でも揺れる段階−:さまざまな子供の問題や親子の衝突が起こりやすくなり、家族ライフサイクルの中で最も困難な時期。子供の自立と依存、思春期危機に対し夫婦が協力して補い合い適切に対応できるかがポイント

6、子供の巣立ちの時期−岐路に立つ家族−:子供が進学や就職、結婚により巣立ち、子離れの時期。家庭が親子関係中心から夫婦関係中心となる。子供との関係が密な母親は巣立ち症候群(抑うつ)になりやく、夫婦関係が良好でない場合には夫婦の危機ともなりやすい。子供とは適切な距離を保ち、夫婦関係の再構築を行う

7、老年期の家族−さまざまな別れと人生の統合−:自身やパートナーの老化に直面し、親しい人の死別など喪失体験を受け入れていく必要がある。良き祖父母など年長者としての知恵と経験を生かしていく

(参考文献:精神療法 2009年2月号 家族ライフサイクルを活かす〜臨床的問題を家族システムの発達課題と危機から捉えなおす)



ここで、ライフサイクルとストレスとの関係について、具体的にみていきたいと思います。


ライフサイクルの各ステージは人によって異なりますが、女性の場合、結婚出産や家族の影響を受けやすく、それに伴い、仕事の仕方や調整が必要になります。自分が思い描くようにいかないことも多く、仕事と家庭の両立の悩み、身内の悩みを抱えやすくなります。


一方、男性は、女性が育児家事に追われている時期には、仕事において資格取得や研鑽を積む時期にも当たり、長時間労働によって家庭に時間とエネルギーを費やす余裕がないこともしばしばです。

育児は父親として子供の成長に関われるだけでなく、自らの視野を広げ人生が豊かになることでもありますが、男性社会である企業の理解もなかなか進んでいないのが現状ではないでしょうか。


それぞれの家庭事情によりますが、現在の日本社会では、どうしても女性に育児負担が多くなっています。働く女性にとって、また、就労していなくても不調を抱えながら育児をほぼ一人で担う女性にとっては、次のような不安材料がのしかかってきます。


育児休暇をいつまで取るのか

保育園に入れるのか

送迎の時間は大丈夫か

子供が病気になったら誰がみるのか

小学校に入ったら放課後はどうするのか

習い事の送迎はできるのか

PTAや行事の参加はどうするのか

中学高校でのお弁当、部活の応援や父母会

思春期危機をどう乗り越えるのか

兄弟関係、友達関係

学業の心配、塾や進路をどうするのか、、、等々

子供の成長に応じて心配や課題が次々とやってきます。


診療していても、このような不安や心配事を抱え、ストレスを感じている方が沢山おられます。そんな時には。。



子育て中に少しでも気持ちが楽になるように♪


一人で抱え込まないで、相談相手を作る

子育てチームを組めると心強い

何を大切にするのか、そのために何を選択して何を削るのか、自分なりに考える

その上で、周りに具体的な支援をお願いする

あらかじめ情報収集をし経験者から話を聞く

同じ立場や共感共有できる人と交流する

欲張らず大事にしたいことを優先させる

迷っても決めたことを良しとする

見通しを立てる

上手くいかなくても自分を責めない

がんばっている、それなりにやっている自分を褒める

そして何より  今を楽しむ!



私の場合も、仕事が忙しい夫に頼れず、仕事と家庭の両立に悩みながら20数年走り続けてきました。綱渡りのような時期もあり、紆余曲折ありましたが、今年、下の息子が大学に進学し子育てを卒業。

子育て中は葛藤を抱えながらも、なるべく長いスパンで考えるようにしていました。

20代 学業と仕事

30代 仕事<子育て

40代 仕事=子育て

50代 仕事と趣味?

自分なりに大まかに区切って、今の時期はこれでいいんだと納得させるようにしていました。

そして、全てのことをできるわけではないので、こちらを選んだからには諦めも肝心と思うようにして、必要以上にプレッシャーやストレスをかけないようにしていました。もちろん、子育ての間も仕事の手を抜いた訳ではありませんが、時間的制約のため、やりたいことをやり残してきたことも事実です。

こうして仕事を続けられたのも、子供が小さい時には、当直のない常勤的非常勤として、子育て経験の豊富な女性医師やスタッフのいる職場で働けたことや上司の理解など恵まれた環境だったことも幸運でした。そして、家族をはじめ保育園、学童、学校、友人など支えて下さった周りの方々に感謝しています。


これからは、人生後半。

今までの臨床経験や人生経験を患者さんや社会に還元していけると幸いです。ブログを始めたのも、そんな思いからです(*^-^*)

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。



最後に

現在、男女を問わず、ワークライフバランスが重要視されるようになってきています。

どのような人生を送りたいのか、仕事と家庭や趣味とのバランスをどのようにとっていくのか、何を大切にしていくのか、自ら考えてデザインしていくことが求められています。

キャリアをいつ、どのように積んでいくのか、自ら選んでいくとともに、それが叶えられるよう、社会や企業にもシステムづくりや理解を深めてもらいたいと願います。


自らの生きがいを大切にしながら、親子・夫婦の関係共に適切な距離を保ち(つかず離れず)次にやってくるであろうライフイベントや環境の変化に対し準備を行うことで、少しでも余裕が持てるのではないでしょうか。

置かれた環境や状況によって、工夫の仕方は人それぞれだと思います。

ご自分なりのペースやライフサイクルに合わせて、ストレスに備え、あるいはストレスと上手く付き合いながら、健康に過ごせるといいですね!




2019年8月25日(日)
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