学校に行けないあなたとご家族へ |
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新型コロナウイルス感染症対策に伴う休校措置が解除され、1ヶ月が経ちました。 学校が再開し、何とか登校しているけれど疲れが出ている方、あるいは、以前から学校に行きづらく、再開に合わせてがんばったものの朝になると体調が悪く登校できない方もおられると思います。 最近、不登校や体調不良を主訴に受診される中高大学生の方が増えてきました。 皆さん、真面目な方ばかり。 そして、学校に行けないことで、自分を責めてしまったり、周りに迷惑をかけている、こんな自分は価値がないと思ってしまったりしています。決してそんなことはありません。 あなたは、あなたなりにがんばってきた。今もがんばろうとしているけれど、これ以上がんばれない、、のではないでしょうか。 学校に行けないから価値がないということは全くありません。何ができて何ができないとかの評価ではなく、あなたの存在そのものが尊いのです。生きていることで親をはじめ他者に喜びを与え貢献しているのです。堂々と胸を張って過ごしてください。 そして、限界を感じたら、一旦立ち止まって休むことも必要です。 今は自信が持てないかもしれませんが、この機会に、自分はこれでいいんだ、こうしたいと思えるような心の基盤を作っていきましょう。きっと、あなたにとってかけがえのない財産になると思います。 不登校の原因 不登校になっている子どもたちは、理由が自分でもわからないとよく言います。友達関係がうまくいかないことがきっかけになっていることも多いですが、学校に行けるなら行きたい。行こうと思って夜に準備をするものの、朝になるとお腹が痛くなったり起き上がれなくなったりします。そして、行けないことを申し訳なく思っていることが多いものです。 不登校の原因は人それぞれですが、クリニックを受診される多くの方は何らかの傷つきを抱え、心身疲弊状態になっています。 過剰適応といえるぐらい、がんばり続けて心身不調に陥っている場合や、いじめなどトラウマ的体験が積み重なり自己否定が強くなっている場合もあります。 心の傷は目に見えず、本人にも自覚がないことも多いため、わかりづらいですが、身体の傷と同じように、傷が癒えるのを待ったり手当てしたりすることが必要になります。 また、繊細で周りが気になる人や集団が苦手な人たちにとって学校の現場は、エネルギーを消耗しやすいものです。 そして、夏休み明けなど長期休暇後に登校しづらくなることは今までにも指摘されていましたが、今回の長期休校の影響を受けている人もいるようです。 食事や睡眠がとれない場合には、うつ病などの気分障害圏や精神病圏の可能性もあるので、経過をきちんと見ていく必要があります。また、背景に発達障害や敏感気質の特性を持っている子どもや家庭環境の影響を強く受けている子どもに対しては、周囲の理解や環境を整えるなどの配慮が特に必要になります。 学校に行けなくても 養老孟司さんは「学校では教えない、生きる上で大切なことがある」「私なんて、子どもの時はいわゆる登校拒否でした。登校拒否というと、道を外れた人という認識があると思いますが、私は学校に行かないことをおかしいことだとは思いません。逆に自分で自分の道を歩んで行こうとする印象さえ受ける。集団が頼りにならない、集団が歩んでいる道に違和感を覚えれば自分で何とかするしかないでしょう。それが登校拒否としてあらわれているにすぎません」「学校に行くにしても行かないにしても、あまり思いつめないほうがいい。人間はできることを全てやろうとする悪い癖があります。私はどこかに留保を置いておくことが豊かさにつながると思います」と言っておられます。 あなたへ 大丈夫!何とかなるよ! あなたのことを信じて応援してるよ 自粛生活で睡眠リズムが乱れてしまい、学校再開後もリズムが戻らず、登校しづらくなっている人もいると思います。できるだけ毎日同じ時刻に起きて、朝日を浴びながら身体を動かし、朝ごはんをしっかりとりましょう。生活リズムを整えていくことで登校しやすくなります。 また、学校に行こうとがんばるものの、心もからだも疲れ切って思うように動けない人もいると思います。今、学校に行けなくなっている自分を責めないようにしてください。 新型コロナウイルス感染症の終息見通しが立たず、将来のことが不安になったり現在の生活にもストレスを感じたりすることがあるかもしれません。思っていることを話してみると気持ちが楽になることもあります。 そして、好きなことや没頭できることがあれば、ぜひやってみてください。 勇気や意欲が出てきたら、次のステップに進んでいけるといいですね。 もし所属する学校に行けなくても、いろいろな道があり、選んでいくことができます。不登校を経験した魅力的な大人の方は沢山おられます。一番大切なことは、あなたが幸せになることです。一人で抱え込まず、迷うことや困ることがあれば信頼できる人に相談しましょう。 生き方は人それぞれです。 あなたらしく過ごせる、あなたの道を見つけていけるといいですね。 ご家族へ ありのままの子どもを受け入れて 焦らず寄り添ってあげて 自分も子どもも追い込まないように 親自身が楽しみ幸せを感じて 子どもが自信を取り戻すのを待とう ありのままを受け入れる まずは、子どもの気持ちを理解して受け入れることが大切です。話をじっくり聞いて、うんうん、そうだね、しんどかったね、がんばってきたんだねと。 傷ついた心を癒すためには、自分が受け入れられている、信じてもらっているとの基本的信頼感の充足が必要です。お母さんお父さんが、どんな自分も丸ごと受け入れてくれているという思いは何と心強いことでしょう。親の子を信頼する優しい眼差しは、子にとって安心して自分や他人を信じる気持ちを育みます。 ベッドに横たわり何もしていないように見えても、頭の中はいろいろ考え、もがき苦しんだり、心の中は葛藤で悩んでいたりします。人生にとって、前に進むための準備だったり、エネルギーを貯める時間であったりするかもしれません。 もし、子どもが辛い言葉を発した場合には、子どもの苦しさや置かれた状況がそうさせていると捉えて、反応しすぎないようにしましょう。私たち大人は、子どもに対し、あなたのため、あなたを思って、将来のために、と言いながら、私たちの考えを押し付けがちです。そして何とかしないといけないと一生懸命になりすぎて反応がないとショックを受けたり怒ってしまったり。よくよく考えると、大人がこうしてほしいという勝手な理想だったり、こうあるべきとこだわっていたりすることも多いと思います。 苦しい時は時間が長く感じますが、親も子も成長できるいい機会ととらえ、干渉しすぎず、家での役割分担など子どもに任せてみてはいかがでしょうか。自分に出来ることがあり、親が喜んでくれることは、子どもにとって嬉しく勇気づけられるものだと思います。 そして、子どもと過ごせる、かけがえのない今この時を大切にしながら、あなたは大丈夫!信じてる!応援してる!というメッセージを送り続けてください。 親自身の楽しみを 自分のことで大切な両親や家族が喧嘩している、または学校と対立している姿を見るのは、本人にとって、とても辛いことでさらに傷ついてしまいます。取り巻く大人の方針は、ある程度違いはあっても相反することがないようにしたいものです。 周りの大人たちは、応援者として協力体制を築き、本人が安心できる環境を整えるようにしてください。 そして、アドラー心理学でいう「課題の分離」も必要です。子どもの不登校に親は悩みますが、学校に行くか行かないかは子どもの課題であり、イライラや不安とどう向き合うかは親の課題となります。 親御さんは心穏やかでいられるようご自身のケアをしながら、仕事や趣味に力を注ぎ、自らの人生を楽しんでください。世の中、そんなに悪くないよ、楽しいこともあるよ、いろいろな生き方があるよと。コロナで大変な思いをしたけれど、これを機に工夫をしながら前を向いて進んでいく姿は、きっと彼らに勇気と元気を与えることでしょう。 親や周りの大人たちは、深い愛と広い心を持って子どもを尊重し、自らも生き生きと過ごしていきたいものです。 このような安心できる環境の中で、子どもたちは少しずつ自信を取り戻し、何かやってみよう、チャレンジしてみようと前に進みやすくなるのではないでしょうか。 皆さまが幸せに過ごせますように。 |
2020年6月28日(日) |
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