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今日は桃の節句、雛祭り。まだ寒暖差があるものの、日差しが柔らかくなり春めいてきました。 昨今の社会情勢など先行き不安を抱きがちですが、未来のある子どもたちが健やかに育ち、安心安全に暮らせる社会でありますよう心から願います。 今、注目されている「ウェルビーイング」 ウェルビーイング(Well-being)とは、心身と社会的な健康を意味し、多面的な幸せを表わします。いわゆる「自分らしく生きていけている状態」を指します。 私たちは、誰でも「足りないもの」「ハンディキャップ」を抱えながら生きていますが、そんな中でも「足りない」「不十分」を受け入れつつ、「いい部分」に目を向けることで、今ある幸せに気づき、自分らしく、いきいきと充実して生きていくことができるのではないでしょうか。 厚生労働省も「ウェル・ビーイングとは、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」と定義しており、より多くの人が生き生きと活躍できる社会の実現を掲げています。 ![]() ![]() 先日、通院中の患者様が事業所で作製した、ちりめん細工のうさぎ雛人形や手の込んだ色とりどりの小物を見せて下さいました(上の写真)。 没頭しながら心をこめて創作した作品を自ら飾って鑑賞したり、人に感動を与えたり、喜んで買ってもらったりすることは、とても楽しく嬉しいことだと笑顔で話してくれました。 この方は、事業所に通うようになり、対人交流も増え、明るく積極的になり、目標もでき、生き生きと充実した毎日を送っておられます。まさに、ウェルビーイングといえると思います。ますますのご活躍を応援しています。 ポジティブ心理学において、よい生き方とはウェルビーイングの定義でもある身体的・精神的・社会的にも満たされている生き方を指します。 心理学の中でも比較的新しい領域であるポジティブ心理学は、米国のマーティン・セリグマン博士により新設され、ウェルビーイングを科学として理論的に測るために5つの要素「PERMA」を提唱しました。 博士の名言に「心理学における最大の発見は、人は考え方を選べるということだ」があり、我々の視野を広げてくれます。 ウェルビーイングを構成する5つの要素 「PERMA」:幸せを感じる5つの心理状態 ・Positive Emotion(ポジティブ感情):楽しさ、充実感、喜び、安らぎ、感謝、希望といった前向きな感情。高める方法として、大切な人と過ごしたり趣味活動など楽しめる活動をしてみる ・Engagement(何かへの没頭):何か(仕事や趣味など)に、時間や悩みを忘れて没頭したり打ち込んでいる状態。 高める方法として、好きな活動に参加したり、日常の活動や仕事に集中したり、自分の強みを知り発揮したりする ・Relationship(人との良い関係):他者(家族、友人、同僚などを含む)に支えられ大切にされていると感じ心が満たされている状態。自己肯定感の向上につながる。良い関係を築く方法として、自分から声をかけて接点を持ったり、相手への理解を深めたりする ・Meaning and Purpose(人生の意義や目的):社会貢献や他者への貢献。人生の意義や存在価値の確認。意義を自覚する方法として、目的を見つけたり、新しく創造的な活動をしてみる ・Achievement(達成感):目的に向かって取り組むこと、何かを成し遂げること。必ずしも社会的成功は伴わなくてもよい。満足感を得られている ![]() 当院通院中(70代)絵画作品 体調に波がある中、季節感と彩り豊かな絵画作品を制作されています。作品を眺めていると心が和み優しい気持ちになります 「記憶の上書き」で心を元気に 〜ポジティブ・サイコロジーでうつ予防 嫌な体験をした時には、誰でもマイナスの感情に支配されます。プラスの感情を増やすことでマイナスの感情を軽減させるために「記憶の上書き」をする。つまり、憂うつなマイナス感情の体験1に対し、ポジティブ感情の経験を3にすると(3:1)気分はうつスパイラルに入りにくいといわれています。そして、ポジティブ感情は心血管系のストレス反応も制御するとされています。 気分が落ち込んだ時には、心をリセットしにくいものです。 こんな時には、悲観的になってしまうご自分を否定せず受け止めつつ、思いきってポジティブ感情を引き出せそうな行動を試みるのも一つの方法です。 たとえば、「空を見上げて深呼吸をする」「お気に入りのぬいぐるみやクッションを抱いて安らぐ」「好きな音楽や香りで気持ちを落ち着かせる」など、自分が心地よいと感じる行動をおこしてみましょう。 そして「よく頑張ってきた」「今はこれでいいんだ」とご自分を認め、優しい言葉をかけてあげてくださいね。 このように、自分をいたわる言動を増やし記憶の上書きをすることで、落ち込んだ気持ちが少しずつ楽になるとともに、うつの悪化も防ぎやすくなります。 ![]() 当院通院中(50代) 絵画作品 仕事の傍ら、趣味の絵画や書道などの創作活動を楽しまれています。将来は個展を開きたいと生き生きと語られる姿に元気をもらいます 今回ご紹介したウェルビーイングは、コロナ禍でいっそう高まった心身の健康や働き方への意識改革から、今、社会や企業で注目されています。 ウェルビーイング(Well-being)は、さまざまな視点から論じられています。 その中で忘れずに大切にしたいのは、幸せのために何かをする(Well-doing)、しなければいけないというdoing(すること)モードにとらわれすぎす、ただここに自分が存在している、ありのまま受け入れるといったbeing(あること)モードを見失わないようにすること。 「自分は大切な存在」との自己肯定感が基盤にあると、生きやすくなるとともに、今ある「ありがたさ」に気づき、さらに自分なりの彩りを加えていくことで生きがいや心の豊かさにもつながるのではないでしょうか。 ご自分をいたわり大切にしながら、あなたなりのウェルビーイングな生き方・過ごし方を見つけていけるといいですね。 ![]() 当院通院中(50代) 絵画作品 参照 : 厚生労働省 雇用政策研究会報告書概要(案) 「ポジティブ心理学の挑戦」マーティン・セリグマン |
2023年3月3日(金) |
2023年 新年のご挨拶 |
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新年あけましておめでとうございます。 旧年中は温かいご支援とご協力を賜わり、厚く御礼を申し上げます。 街中には人出と活気が戻ってきましたが、長引くウィズコロナ生活と不安定な社会情勢の中、不安を抱えておられる方も多いかと思います。 皆様が安心して心豊かに過ごせますよう、スタッフ一同、尽力させていただく所存です。 本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。 ![]() 当院通院中(70代) 卯年の絵画 2023年の干支はウサギであり、六十干支では「癸卯(みずのとう)」にあたる年です。「飛躍」「向上」とともに「これまでの努力が花開き、実り始める」といった、何かを始めるのに縁起が良く、希望が芽吹く年といわれます。 温和で好転するよい年になるといいですね! |
2023年1月5日(木) |
「笑門来福」〜笑いは健康の源 |
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本年が皆様にとって穏やかで健やかな一年になりますよう心よりお祈り申し上げます。 安心して来院いただけますようスタッフ一同 笑顔でお迎えし、適切かつ丁寧な診療を心がけてまいります。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 コロナ禍が続いた昨年は中高年の方のみならず中高生など若い世代の方の受診が増えました。 思春期である中高生世代は、環境の影響を受けやすく、特に家庭や学校での大人の言動や態度にしばしば敏感になります。大人が疲れて笑顔が減ると、子どもも笑顔が減り、また大人の笑顔が減る悪循環を呈してしまいます。 コロナ禍でより人との接触も減り、笑う機会も減っているのではないかと思います。 「笑門来福」「笑う門には福来る」というように、悲しいことや苦しいことがあっても、希望を失わず「笑い」や「笑顔」を少しでも増やし健康を保ち幸せを感じられたらいいですね。 ![]() お正月プリザーブドフラワー 「笑い」の効果 楽しかったことを思い出したり、楽しいことを想像したりして、どんな些細なことでも幸せを感じられたら、自然と笑顔になれます。そして笑って笑顔でいると幸せが巡ってきます。 なかなか面白く感じられない時でも笑顔を作って笑ってみましょう。声を出して笑っても、つくり笑いでも、口角を上げて微笑んでも同等の効果があるといわれています。 笑うと何だか気持ちが楽になったり、肩の力が抜けたりします。 そして笑顔でいると、周りも笑顔になり、コミュニケーションが円滑になり、いい関係や連鎖が生まれ、お互いにハッピーになります。 「笑い」がもたらす健康効果には、さまざまなものがあります。 1)NK細胞が活性化→免疫力アップ→がん・感染症予防 2)コルチゾール減少→血糖値低下→糖尿病予防 3)ドーパミン放出→意欲や記憶力がアップ→認知症予防 4)セロトニン放出→気分の安定化、不眠やうつ予防 5)エンドルフィン放出→鎮痛効果・幸福感 6)顔の表情筋を鍛える→リフトアップ効果 このように「笑い」は心やからだの健康を保つのに役立ちます。 もちろん、笑うだけで疾患が予防できる訳ではありませんが、プラスに働くことは国内外の研究で指摘されています。 笑いの頻度と認知機能の関連の疫学研究では、ほとんど笑う機会がない人は、ほぼ毎日笑う人に対して認知機能低下リスクが2倍以上高いとのデータがあります。 また、笑う頻度と死亡や病気のリスクを分析した調査結果では、ほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて死亡率が約2倍高く、脳卒中など心血管疾患の発症率も高かったといいます。 辛さや苦しさを抱え、笑おうと思っても笑えない状況にある方もおられると思います。 無理をされる必要はありませんが、微笑んでみると心が少し軽くなるかもしれません。 そして回復の兆しが出てきたら、心身リハビリの一環としてからだを動かすとともに口角を上げて笑顔でいると好循環が生まれやすくなるのではないでしょうか。 今、ストレスを感じておられる方もそうでない方も、ぜひ「笑い」を生活の中に取り入れて、ご自分らしく健やかに過ごせるといいですね。 ![]() ![]() 当院通院中 70代女性の絵画作品 参考文献 「認知症予防を目的とした笑いの効果についての実践的研究」大阪大学 大平哲也 「笑う頻度と全死亡および心血管疾患発症リスクの関係:山形県コホート研究」山形大学 櫻田香 |
2022年1月6日(木) |
「あるがまま」〜コロナ禍における森田療法の活用 |
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梅雨が明け、本格的な夏がやってきました。 米大リーグ エンゼルス・大谷翔平選手の大活躍ぶりや振る舞いに熱視線が注がれています。 二刀流の驚異的な実力だけでなく、プレーを心から楽しみ、誰にでも笑顔で丁寧に接する姿には、心を引き寄せられます。 皆から注目を浴び結果を期待される大舞台で不安や緊張が全くない訳ではないと思いますが、積み重ねた努力とともにそれらをパワーに変える力もあるのでしょうね。この姿勢を学び、これからも応援し続けたいと思います。 ![]() コロナ禍における価値観の対立と不安 クリニックを受診される方の中には、コロナ不安だけでなく、コロナ自粛に対する価値観の違いにストレスを感じている方が結構おられます。友人から飲食の誘いを受け、断るべきかどうかで気疲れしたり、友人への不信感にもつながったりする場合もあるようです。 特に年配の方はコロナ自粛が長引くことによる心身への影響や生活能力の低下なども問題視されており、どこまで自粛すべきか、何が正解かわからないことも多く、悩み迷うこともあるのではないでしょうか。 今では高齢者のワクチン接種が進み、以前よりは外出への抵抗が減っているものの変異株の拡大などもあり、まだまだ不安を抱えておられる方が多いのが現状です。 このご時世で不安を感じるのは当たり前ではありますが、どの年代においても不安を強く感じる方に共通しているのは、完璧を求めがちであることです。 私たちは、ついつい「こうあるべき」「こうなければならない」との概念に縛られがちです。 特にコロナ禍の今、「コロナにかかって家族に絶対にうつしてはいけない」と身動きがとれなくなってしまっている方もいます。もちろん、感染対策は必要ですし、不要不急の外出自粛が叫ばれる中、ストレスもたまり、両極端な気持ちや行動につながりやすいのも事実です。 ![]() 「完璧」「完全」を目指していませんか? ほどほどにできず精神的な不調を抱えてしまうことはよくあります。 10割やれても6割7割でいく。10割を目指して走り続けるとどこかで息切れして長続きしなかったり疲弊したりすることが多いものです。 長時間労働が続くと過労性のうつ病に陥りやすくなるように、頑張りすぎは心身によくない。でも、頑張らないといけない時もある。 もし大きな仕事を任されいつもより頑張った時には、一段落した時に意識して休みましょう。休むことを悪く思わずに、次の仕事のパフォーマンスを上げるために心身のメンテナンスをしていると前向きに考え、休息をしてください。 また「こうでなければならない」と力が入りすぎると、自律神経のバランスを崩して心身不調に陥ったり、パニック症などの不安症に発展したりします。 「とらわれ」の弊害 「とらわれ」による弊害にはどんなものがあるでしょうか。 「ほどほど」や「適当」ができなくなり、生活に支障を来たすようになると、心の病として治療が必要になります。もちろん、原因はこれだけではありませんが、「わかっているのにやめられない」「不安や恐怖で〜できない」等、とらわれの結果、下記の病態に陥ることがあります。 強迫症:強迫観念および強迫行為により時間を浪費する。施錠や火の元を頻回に確認をする確認強迫や洗浄強迫、不潔恐怖、加害恐怖など 全般性不安症(不安神経症):さまざまなことが次から次に不安になり身体症状がでる 社交不安症:人前や社交場面での著しい恐怖や不安 パニック症、広場恐怖:頻回なパニック発作と予期不安による行動回避 摂食障害、嗜癖、依存症:極端な摂食、アルコール・薬物・ネットやゲームへの依存 引きこもり:「失敗してはいけない」と身動きとれなくなる 心が疲れていると、より「とらわれ」やすくなるので要注意です。 「とらわれ」から解放させるため、また心の健康を保つために、日頃から「森田療法」の視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。 ![]() 森田療法とは 森田療法とは、日本の精神科医である森田正馬によって100年ほど前に創られた、神経症に対する精神療法です。 森田正馬先生はかつての神経症(強迫症、社交不安、パニック症、広場恐怖など)の背景に神経質性格(心配性、完全主義、理想主義、負けず嫌い、過敏など)が認められ、「とらわれ」の心理的メカニズムによって症状が発展すると考えました。 たとえば偶然、動悸がするとそれに強い不安を覚え心臓部に注意を集中し、その結果ますます感覚が鋭敏になり動悸がもたらされます(注意と感覚が相互賦活的に作用して症状が強まる=精神交互作用)。そして、神経質性格の人は、不快な感情を「あってはならないもの」とコントロールしようとしすぎて、かえってそれにとらわれてしまい、神経症に発展します。 不安やその背景にある死の恐怖は、私たちが生きていく上で避けられない感情で、より良く生きようとする欲望(生の欲望)でもあり、誰もが持っている自然な感情であります。 したがって治療目標は「とらわれ(悪循環)」から解放され”こう生きたい”という本来の欲求に沿い自分らしく生きる基盤を作ることです。つまり、「不安が生じても症状にとらわれることなく行動できる」よう生活を立て直していくことです。 森田療法の基本 〜「あるがまま」の姿勢 1、感情:感情は自然なもので操作不能。感情をありのままに感じ、そのまま受け入れる(恐いものは恐いと受け入れる) 不安に対する「あるがまま」:不安を自然な感情の一つとして「そのまま」付き合う 2、行動:症状や不安をそのままにして、なすべきことをしていく 欲求に対する「あるがまま」:「こうありたい」という自ずと沸き起こる欲求も「そのまま」受け止め、それに従って行動に移す ![]() 森田療法の活用 〜不安や症状を抱えたまま、今できることをやろう ・理想の自己(かくあるべし)と現実の自己(あるがまま)とのギャップがあることが多い。頭でっかちになっていないか? ・きちんとしていたい「欲求」ときちんとできない「不安」を客観視し、不安を取り除こうとしなくていい ・「あるがまま」の自分を受け入れ、不安と共存する ・症状にとらわれず、やるべきことや、したいことをして没頭する ・自分の症状ばかりに向かっている無駄なエネルギーを外部のこと(仕事、勉強、趣味など)への関心に転換、気分に左右されずに行動する ・不安は時間とともに軽減する。感情をそのまま放任すれば、時とともに自然に消失する(感情の法則)ので時間の経過を待つ(パニック発作など) ・不安と睨めっこせずに「不安なまま」何かしら手を出してみる(行動を通して注意の転換を図る) ・気分は気分としてなすべきことをする。「ドキドキしながらもやれることをやろう」(緊張しても買い物できたらOK) ・事実は変えられないが、行動は変えられる ・「日記療法」:一日にやったことや思ったことを記し、体験を振り返りながら学ぶ ・「とりあえず」「小さな一歩から」やってみよう! ![]() 不安やストレスとの付き合い方 ベストセラーにもなった著書なのでご存知の方も多いと思いますが、不安やストレスとの付き合い方について森田療法にも通じるところがあるため、ここで紹介させていただきます。 心理学者のケリー・マクゴニガルは「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」で「ストレスを見直す」ことと「ストレスを力に変える」ことについて次のように述べています。 ストレスを避けるのではなく、受け入れてうまく付き合っていく ・価値観には自分が大切に思っていることが反映されている ・自分の価値観をしっかり持つようになると、ストレスを感じた経験についての考え方が変わり、対処できる自信がつく ・「生きがいのある人生」に見られるもっとも大きな特徴として、ストレスを感じた経験の多い人ほど人生に大きな意義を感じていた ・「ストレスにはよい効果がある」と思っている人は「ストレスが害になる」と思っている人に比べて、うつ状態になりにくく、人生に対する満足度が高い ・「ストレスは害になる」と考えている人はストレスに向き合おうとせず、ストレスの原因となっている人間関係や役割に対して、努力したり意識を向けたりするのをやめる ・一方、「ストレスには役に立つ点もある」と考えている人は、事実を受け止め、ストレスの原因に対処する方法をしっかり考える。そしてサポートやアドバイスを求め、ストレスの原因を克服するか、変化を起こすための対策を講じる。困難な状況をなるべくポジティブに考え、成長する機会としてとらえることで、その状況において最善を尽くす ストレス反応を味方にする ・ストレスのかかる状況で緊張したり不安を感じても、それはやる気の表れで「私はワクワクしている」「ストレスのおかげでうまくいきそうだ」「やりがいの仕事にはストレスは付きものだ」と思って受け入れられるようになると、ストレスや不安はエネルギー源になり、自分の実力を最大限に発揮できる ・ストレスを感じると「闘争・逃走反応=脅威反応」が起き、危険から身を守ることを優先するが、これを「行動を起こす勇気が出る反応=チャレンジ反応」に変える ・「チャレンジ反応」を起こしやすくするには「自分の強み=自分の持っている力」を認識する。たとえば、挑戦に向けて準備を重ねてきたことを考えたり、過去に同じような問題を乗り越えた経験を思い出したり、自分を支えてくれる大切な人たちのことを考えたりすることで、考え方が素早く転換し、脅威がチャレンジに変わる ストレスを力に変える ・あらゆる不安障害は「不安と回避の悪循環」を招く可能性があります。不安の原因を避けていると、かえって恐怖感が強まり、先のことがますます不安でたまらなくなってしまうのです ・心臓がドキドキして呼吸が速くなっているのに気づいたら、それは体があなたにエネルギーを与えようとしているしるしだと思ってください。「緊張したっていいんだ、興奮しているしるしだから。心臓もスタンバイしてるんだ」と自分に言い聞かせましょう。ストレス反応のおかげでかえって力が沸いてくることを思い出しましょう ・不安、プレッシャー、過去のつらい経験はエネルギーの源(困難な経験をした人の方が、あまり破局的な考え方をしなくなり、力が沸いてくる) ・逆境のよい面を見つめる(逆境はレジリエンスを強化し、トラウマの体験は成長につながる可能性がある) ・ストレスによってどんな感覚が生じても、それを無理に打ち消そうとして焦らないこと。それよりも、ストレスのせいで沸いてくるエネルギーや、強さや、やる気をうまく利用して、いま自分がやるべきことに集中しましょう。体はありったけの力や手段を利用できるよう準備して、あなたが目の前の困難にうまく対処できるように応援しています。深呼吸をしてエネルギーが体中にみなぎっているのを感じましょう ![]() 我々は、感染症の流行や災害など何が起こるかわからない不確実な世の中で生活していて、生きていく上で不安やストレスを感じることは当たり前だといえます。 何事も100%の確実性はないものの「こうあるべき」と完全完璧を目指すばかりにたとえ0.001%でも不確実の可能性があると、そのかなり確率が低い事象に注目してしまいがちです。 逆境ともいえるコロナ禍で過剰な不安にとらわれ、大切なことを見失いがちになっていませんか? こんな時代だからこそ、森田療法における「あるがまま」の視点を日常に取り入れ、不安やストレスとうまく付き合いながら、やりたいことや今できることに力を注いでいけるといいですね。 ![]() 参考資料・図書 日常臨床で森田療法を生かすコツ-変化を引き起こすための介入方法 北西憲二、中村敬、立松一徳 第111回日本精神神経学会学術総会 森田療法における「あるがまま」とは 久保田幹子 心理学ワールド87号 スタンフォードのストレスを力に変える教科書 ケリー・マクゴニガル |
2021年7月17日(土) |
謹賀新年〜偉人のことばとともに |
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新年あけましておめでとうございます。 当院では、スタッフ一同、一人でも多くの方が笑顔になっていただけるよう、また地域の皆さまの心の健康を守れますよう丁寧に向き合い、寄り添ってまいります。
・過去を思い返す日が来たときには、
・もし冬がなかったら、
・私には私にしか
(元旦の空高く舞い上がる凧) 偉人のことばには勇気づけられます。 |
2021年1月4日(月) |
うつ病の早期発見、早期治療、適切なケアの重要性〜コロナ禍で若年うつ病の受診が増えています |
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秋も深まり過ごしやすい日もありますが、寒暖差が激しく、自律神経のバランスが崩れやすい時期でもあります。さらに、第3波ともいわれるほど新型コロナウイルス感染が再拡大しており、流行の長期化は、我々にさまざまな制限や不安をもたらし、慢性的なストレスとなっています。 秋田大学の調査によると、学生のほぼ1割に中等度以上のうつ症状がみられたといいます。また、医療ベンチャー「ジャパンイノベーション」の調査では、大学生の44%にうつ病の可能性ありとの驚きのデータが示されています。米国においても、新型コロナウイルス流行がもたらす社会的孤立と機会喪失が、若者の精神衛生とキャリア形成に影を落としており、若者の「コロナうつ」のリスクが増加しているとの指摘があります。 ようやく対面式授業が始まった大学があるものの、友人とも会えず長期にわたり自宅で悶々とオンライン授業を受ける日々は、学生にとってどれだけ辛く孤独なものだったでしょうか。そして経済的な見通しが悪化する中、就職や将来への不安に苛まれている方も多いと思います。 うつ症状のみられる若年層の受診が増加 最近、不安や抑うつ、倦怠感などの心身不調を訴えクリニックを受診される方が多くなりました。特に今年は、例年以上に若い方の受診が目立ちます。 コロナ禍においては、全世代でメンタルヘルスケアが必要ですが、特に若い方のメンタルヘルスケアの重要性を感じます。 どの年代においても一年一年はかけがえのないものですが、特に若年層(10代、20代)にとって、コロナ禍の生活は、思い描く生活や活動ができないことから、喪失感や無力感を強く抱きやすくなります。また、休校措置によって授業や行事が年度後半に重なったことで、時間的かつ精神的な余裕がなくなり、疲れが溜まりやすいともいえます。さらに将来の展望が見えにくく悲観的となったり不安を抱きやすくなったりします。 このような状況下で、うつ状態に陥り受診に至る方が増えています。診察中に涙が溢れだすことも多く、受診するまでに辛さを抱えながら耐えてきたことが窺われます。 個々のケースにもよりますが、睡眠や食事がとれにくい状態が続く場合、思考力も低下しており悪循環を断ち切るため、休養が必要になります。 「うつ」というのは、がんばり続けて消耗・疲弊した状態(エネルギー切れ)のため、がんばろうとしても、がんばれない状態です。 周りの方は、辛さに共感しつつ、今までがんばってきたことを認め、休養の保証をしてあげてください。ご本人は休むことに罪悪感を抱いていることが多いですが、休んでいいと言われることで、ほっとしたり少しでも気が楽になったりするものです。 うつ病とは 日本人のうつ病発症率は13人に1人といわれ、今や誰でもかかり得る疾患です。うつになると、気分が塞ぎ、悲観的な考えとなり、自己否定や罪悪感(自分自身を責める)が出るとともに、疲労感、食欲低下、頭痛、腹痛、睡眠障害などの身体症状も出現します。 うつ病治療は、休養、薬物療法、精神療法、環境調整を組み合わせて行います。ご家族をはじめ周囲の方には、病気を受け入れ、治療や関わり方について正しい知識を持ちサポートしていただくことで、患者さんの回復力を高めていくことができます。 1、うつのサインに気づく 一緒に生活しているご家族だからこそ、ちょっとした変化に気づくことができます。下記のようにいつもと様子が違ったり、気分や体調がすぐれないことが続く場合には、うつ病が関係している可能性がありますので、早めの受診をお勧めします。 日常生活の変化 ・友達と交流しなくなった(SNSを含む) ・好きなことや趣味をしなくなった ・いつもやっていることをしなくなった ・横になったり、ぼーっとしていることが多くなった ・口数が少なく会話が続かなくなった ・ちょっとしたことで怒ったりイライラしたりするようになった ・些細なことを気にするようになった ・身だしなみに気を遣わなくなった 身体症状 ・不眠、だるさ、頭痛、吐き気、めまい、肩こり、動悸、胃のもたれ、腹痛、下痢や便秘など 2、治療をはじめる うつ病になると決断力が低下するため、身体の不調を自覚していても本人自ら行動を起こしにくくなります。精神科や心療内科への受診に抵抗がある場合、まずは、内科などかかりつけ医で相談したり検査したりしてもらう方法もあります。身体に異常がないとわかったことで心療内科を勧めると受診しやすくなる場合もあります。一人で受診するのは不安に感じることも多く、できるだけ付き添ってあげると安心して受診しやすくなります。 3、治療のサポートと関わり方のポイント 急性期:まずは安心してゆっくり休める環境を作ってあげてください。回復を助けるため、脳の働きを調整する抗うつ薬などの薬物療法を行うことが多いため、服薬のサポートをお願いします。不安焦燥や悲観的思考が強い場合も多いですが、心のエネルギーをためることを最優先とし、決して無理をさせずに、温かく見守ってください。判断することが難しい時期でもあるため、決断を性急に求めることは控え、退学・退職など重大な決断は回復するまで先延ばしするようにしましょう。 回復期:治療を始めると少しずつ症状がよくなりますが、症状の波が出ることも多く、よくなったり悪くなったり三寒四温のように少しずつ落ち着いていきます。症状が安定したら、睡眠と生活のリズムを整え、少しずつ活動を増やしていきます。本人の思いを尊重しながら、できることから取り組んでもらうようにしましょう。本人が手伝ってくれたら「ありがとう」の気持ちを言葉で伝えてください。些細なことでも自分が必要とされているという感覚は自尊心を高めます。回復には時間がかかることも多いですが、焦らず、適度な距離を置いて長い目で見守ってください。共倒れにならないようご家族もご自身のサポーターをもったり息抜きするなどしてケアを忘れないようにしましょう。 ご家族の力 うつ病治療において、ご家族のサポートは患者さんにとって何よりも大きな支えになります。 辛さのあまり消えてしまいたくなったとき、もう治らないのではないかとあきらめそうになったとき、自分を信じて回復を待ってくれているご家族の想いは、患者さんが病気を克服しようと思う大きな力となります。 時間がかかっても、うつ病は必ず治る病気です。 ご自分のこともいたわりながら、大切な人を支えてあげてください。 参考資料:患者さんの家族のためのうつ病サポートブック 監修 小山司 |
2020年11月23日(月) |
認知行動療法〜しなやかな考え方でうつ気分やストレスを緩和しよう |
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熱中症に注意! 連日、40度近い猛暑が続いています。今年は、酷暑とマスク着用により例年以上に熱中症対策が必要です。 屋外など周囲の人と十分な距離が確保できる場合には、マスクをはずして休憩するようにしましょう。そして、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給をするよう心がけて下さいね。 COVID-19の蔓延 国内で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されてから半年以上が過ぎました。この地方でも再び感染が拡大・蔓延しており、8月6日より愛知県独自の緊急事態宣言が発出されるなど一層の警戒が必要です。 当院では、安心安全に受診いただけるよう、スタッフの健康管理および院内の衛生管理に努めております。来院される皆様にも引き続きマスク着用と手指衛生のご協力をお願いいたします。また、来院がご不安な方はお電話でご連絡下さい。 ところで、今回は、認知療法・認知行動療法についてお伝えします。 長引くうつ症状や対人関係の悩み、ストレスを抱えている方、あるいはストレス対策に興味のある方に読んでいただければ幸いです。 ストレスの感じ方には考え方が影響している クリニックには、最近、コロナ禍におけるストレスでうつ気分や不安を抱き受診される方が増えています。また、上司の叱責など職場のストレスや家庭内ストレスが積み重なり、体調を崩される方も多く受診されます。 同じ環境や状況でも、ストレスを感じやすい方、あまり感じない方がいます。 それは、その人の性格や考え方、習慣や今までの体験などが影響していると考えられています。 人間関係で悩んでおられる方は、その人の思考パターン(考え方の癖)や思い込みに影響を受けていることも多いものです。 そして、うつ状態では悲観的な考え方によって憂うつな気分となり、自分は全然価値がないと確信するなど自己破壊的感情に至ることもしばしばあります。 うつ状態のときによく起こる思考・行動パターンには次のようなものがあり、うつ気分との悪循環(うつ病スパイラル)を呈しやすくなります。 否定的認知(マイナス思考)の3つの特徴 落ち込んでいる時には、私たちは自分、周囲、将来の3つに悲観的な考えを持ちやすくなります。 ・自分自身に対して:自分はだめな人間だ、何の力もない ・周囲に対して:周りの人から嫌われている、迷惑がられている ・将来に対して:現状がいつまでも変わらない、この辛さは一生続く うつ状態での行動特徴 ・活動量が減る:楽しいことや達成感が得られず、元気のもとがなくなってしまう→「何もできていない」と自分を責めてしまう ・ぐずぐず主義:先延ばししたり問題を避ける→やらないといけないことがたまってしまう ・周りにうまく助けを求められない 一方、気分がいいときには、思考、気分、行動はいいサイクルで回っていることが多いものです。 認知療法・認知行動療法では、思考(認知)や行動に働きかけることによって、気分が向上することを目指します。 認知療法・認知行動療法とは 「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいますが、認知や行動に働きかけて、心のストレスを軽くしていく治療法を「認知療法・認知行動療法」といいます。 自分の考え方(認知のあり方)が、私たちの感情や行動、身体に大きく影響を及ぼすといわれています。 誰しも自分の考えは正しいと思いがちですが、特にうつ状態や不安状態では健康なときに比べ、状況を多面的に解釈することが困難になってきます。 そこで、自分の思考パターン(考え方の癖)に気づいて見直し、バランスのよい考えを取り入れていくことで気持ちが楽になったり問題解決につながったりします。 認知療法・認知行動療法では、「自動思考」と呼ばれる、様々な状況あるいは出来事があった時に瞬間的に浮かぶ考えやイメージに焦点を当てて治療が進められます。 気分は考え方に影響される あなたは職場の上司に「また失敗したのか!」と叱責された際(できごと)、どのような考えが浮かび(自動思考)、どのような気分になりますか(気分)? ・「以前も同じ失敗をした。だめな私」との考えが浮かぶ→憂うつになる ・「あの上司は私ばかりを叱る」との考えが浮かぶ→怒りや不信感がわく ・「次は失敗しないようにしよう。上司は私の将来を期待して言ってくれているのだ」との考えが浮かぶ→希望がわく このように、同じ体験をしても、それをどのようにとらえて考えるかで、そのときに感じる気分は随分違ってきます。そして、身体の反応や行動にも影響します。 「考え方によって気分も変えられる」ということを理解して、自分の思考パターンに偏りや歪みが生じていないか、下記を参考にしてみてください。 思考パターン(認知の偏り) 認知療法家のデビッド・D・バーンズは、うつ病を引き起こす認知の歪みを次のように「10の思考パターン」に分類しています。 1、全か無か思考 物事を白か黒か、○か✕か、どちらかはっきりさせないと気が済まない、非効率なまで完璧を求める極端な思考。「営業成績はいつも一番でないと意味がない」と考える 2、一般化のしすぎ 一度か二度起こった事実をみて「全てこうだ」と思い込んで一般化し、この先もずっとそうであると否定的な結論を下す。一つうまくいかないと「自分は何一つ仕事が出来ない」と考える 3、心のフィルター(選択的抽象化) 良いこともたくさん起こっているのに、物事の悪い面ばかりに注意が向き、良い面が見えなくなってしまう。良いことは無視して、世の中真っ暗だと落ち込む 4、マイナス化思考 何でもないことや良い出来事を悪い方に解釈して、マイナスに置き換えてしまう。仕事がうまくいっても「これは気まぐれだ」と考える 5、結論の飛躍 わずかな相手の言動から、勝手に相手の心を読みすぎ結論を下す、あるいは、根拠もないのに悲観的な将来の結論に飛躍する。相手から褒められたのに「口では褒めているけれど、内心はばかにしているに違いない」と決めつける 6、拡大解釈と過小評価 欠点や失敗を大げさに考え、長所や成功は小さく評価してしまう。些細なミスで失敗すると「なんて無能だ」と拡大解釈し、成功しても「こんなことはたいしたことでない」と過小評価する 7、感情的決めつけ 自分の感情をあたかも物事の真実である証拠のように考える。「何の希望もないように感じる。だから私の今の問題は全く解決不能だ」と結論づける 8、すべき思考 何事にも「こうすべきだ」「こうすべきでない」「こうしなければならぬ」と考え、厳しい基準を作り上げ、柔軟な対応ができない。「絶対に〜」と必要以上にプレッシャーを与え、自分自身を追い詰めてしまう。すべき思考を相手に向けると、自分の思い通りでないことにイライラするなどフラストレーションを感じる 9、レッテル貼り 自分や相手にレッテルを貼り、それを固定してしまう。ミスをした時に「自分は落伍者だ」とレッテルを貼り、部下がちょっとしたミスをすると「あいつは能力がない人間だ」とレッテルを貼り、決めつけてしまう 10、自己関連づけ(個人化) 良くない出来事を理由もなく自分のせいにしたり、原因を必要以上に自分に関連づけたりして自分を責める。子供の成績が悪いのを「これは私の責任だ。だめな母親だ」と思ってしまう 思い当たる項目はありましたか? 認知の偏りが全くないという方はいないと思います。生まれ持った気質や養育環境、さまざまな体験を通して、その人なりの思考プロセス(考え方)が出来上がっていきます。 自らが陥りやすい認知の偏りを把握しておくとともに、誰もがストレス下やうつ状態では、上記のような思考パターンに陥りやすいことを理解しておくことが重要です。 偏った認知を修正するためには ある状況に置かれた時にどのように考えるかによって、気分も違ってきます。どのような時に偏った考え方をするのか気づけるようになることが大切です。少し立ち止まり、事実に基づいて考え、考えが偏っていないか、違った考えがないかを見つめ直し、バランス思考を導き出していきましょう。 認知療法・認知行動療法では、思考記録表(7つのコラム)を活用して、バランスの良い考え方を身につけていきます。 辛い出来事があったとき、このようなコラムを使って、頭を整理していくことで、気分を改善し、対応策を考えることに役立ちます。 思考記録表(7つのコラム)をつけてみよう 1、状況:最近、辛い気持ちになった時の具体的な出来事 2、気分:その時、自分が感じている気分(%) 3、自動思考:その時、頭に浮かんだ考えやイメージ ↓事実に基づいて考える、認知の偏りに注目、視点を変えてみる 4、根拠:そう考える理由、自動思考を裏付ける事実 5、反証:反対の根拠、自動思考と矛盾する事実 6、適応思考(バランス思考):自動思考に代わる考え(別の考え、視野を広げた考え) 7、心の変化:「気分」をあらためて評価(%) 次のように自分に問いかけて、視点を変えてみて、より現実的でバランスのとれた考えに切り替えていきましょう。 ・他の人が同じ立場にいたら、なんて言ってあげるだろう? ・あの人だったら、どうアドバイスしてくれるだろう? ・元気な時だったら、違う見方をしないだろうか? ・以前、同じような経験があれば、どう対処しただろう? ・自分ではどうしようもないことで、自分を責めていないだろうか? ・見逃しているプラスの事実はないだろうか? このようにして視野を広げてみることで、認知の偏りが修正され、心の変化が生じ(最初に感じた気分が少し楽になり)、前向きな気持ちや行動につながります。 自分のこころの法則(スキーマ)に気づく 自動思考の根本には、思い込みや絶対的信念があるものです。人の考えや行動には、その人なりのパターンがあり、日々の考えや行動に影響を与えています。それは、過去の経験、トラウマ、人間関係、成功、失敗体験などによって作られます。うつ状態では、マイナスの「心の法則」が優勢になり、柔軟な考え方や行動を妨げます。 たとえば、「私は人から嫌われやすい」という心の法則があると、人から連絡がない状況などで「ああ、嫌われた」との自動思考がより出やすくなります。 自分の心の法則や思考パターンに気づいて、一つだけの見方でないことを知りましょう。そして客観的に考えることで、マイナスの自動思考から早く脱出でき、うつ病の再発予防にも役立ちます。 行動へのアプローチ(行動活性化) うつ状態のときは、活動性や意欲が低下し、休養が必要ですが、少し元気が出てきたら、少しずつ達成感や楽しみを感じられる行動を増やしながら行動範囲を広げていくことが重要です。前向きな行動を増やしていくこと(行動の活性化)で、さらに気分の改善も期待できます。 週間活動記録表などを活用し、どのような行動を行った時に気分が良くなるのか、自分自身の現状を観察しながら、焦らず一歩ずつ段階的に活動をアップしていきましょう。 以上、認知療法・認知行動療法について簡単に説明させていただきました。 患者様の疾患や状態によっては、当院で認知行動療法を行うことも可能ですので、診察時にご相談下さい。 また、セルフケアのためにご自身で行う場合、次のようなワークブックやサイトを利用する方法もあります。 書籍:こころが晴れるノート(大野裕) サイト:大野裕の認知行動療法活用サイト「ここトレ」こころのスキルアップ・トレーニング しなやかな考え方で気分が楽になるとともに、抱えている問題やストレスにうまく対応できるようになるといいですね。 参考文献、図書: 厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」うつ病の認知療法・認知行動療法 いやな気分よさようなら デビッド・D・バーンズ |
2020年8月14日(金) |
学校に行けないあなたとご家族へ |
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新型コロナウイルス感染症対策に伴う休校措置が解除され、1ヶ月が経ちました。 学校が再開し、何とか登校しているけれど疲れが出ている方、あるいは、以前から学校に行きづらく、再開に合わせてがんばったものの朝になると体調が悪く登校できない方もおられると思います。 最近、不登校や体調不良を主訴に受診される中高大学生の方が増えてきました。 皆さん、真面目な方ばかり。 そして、学校に行けないことで、自分を責めてしまったり、周りに迷惑をかけている、こんな自分は価値がないと思ってしまったりしています。決してそんなことはありません。 あなたは、あなたなりにがんばってきた。今もがんばろうとしているけれど、これ以上がんばれない、、のではないでしょうか。 学校に行けないから価値がないということは全くありません。何ができて何ができないとかの評価ではなく、あなたの存在そのものが尊いのです。生きていることで親をはじめ他者に喜びを与え貢献しているのです。堂々と胸を張って過ごしてください。 そして、限界を感じたら、一旦立ち止まって休むことも必要です。 今は自信が持てないかもしれませんが、この機会に、自分はこれでいいんだ、こうしたいと思えるような心の基盤を作っていきましょう。きっと、あなたにとってかけがえのない財産になると思います。 不登校の原因 不登校になっている子どもたちは、理由が自分でもわからないとよく言います。友達関係がうまくいかないことがきっかけになっていることも多いですが、学校に行けるなら行きたい。行こうと思って夜に準備をするものの、朝になるとお腹が痛くなったり起き上がれなくなったりします。そして、行けないことを申し訳なく思っていることが多いものです。 不登校の原因は人それぞれですが、クリニックを受診される多くの方は何らかの傷つきを抱え、心身疲弊状態になっています。 過剰適応といえるぐらい、がんばり続けて心身不調に陥っている場合や、いじめなどトラウマ的体験が積み重なり自己否定が強くなっている場合もあります。 心の傷は目に見えず、本人にも自覚がないことも多いため、わかりづらいですが、身体の傷と同じように、傷が癒えるのを待ったり手当てしたりすることが必要になります。 また、繊細で周りが気になる人や集団が苦手な人たちにとって学校の現場は、エネルギーを消耗しやすいものです。 そして、夏休み明けなど長期休暇後に登校しづらくなることは今までにも指摘されていましたが、今回の長期休校の影響を受けている人もいるようです。 食事や睡眠がとれない場合には、うつ病などの気分障害圏や精神病圏の可能性もあるので、経過をきちんと見ていく必要があります。また、背景に発達障害や敏感気質の特性を持っている子どもや家庭環境の影響を強く受けている子どもに対しては、周囲の理解や環境を整えるなどの配慮が特に必要になります。 学校に行けなくても 養老孟司さんは「学校では教えない、生きる上で大切なことがある」「私なんて、子どもの時はいわゆる登校拒否でした。登校拒否というと、道を外れた人という認識があると思いますが、私は学校に行かないことをおかしいことだとは思いません。逆に自分で自分の道を歩んで行こうとする印象さえ受ける。集団が頼りにならない、集団が歩んでいる道に違和感を覚えれば自分で何とかするしかないでしょう。それが登校拒否としてあらわれているにすぎません」「学校に行くにしても行かないにしても、あまり思いつめないほうがいい。人間はできることを全てやろうとする悪い癖があります。私はどこかに留保を置いておくことが豊かさにつながると思います」と言っておられます。 あなたへ 大丈夫!何とかなるよ! あなたのことを信じて応援してるよ 自粛生活で睡眠リズムが乱れてしまい、学校再開後もリズムが戻らず、登校しづらくなっている人もいると思います。できるだけ毎日同じ時刻に起きて、朝日を浴びながら身体を動かし、朝ごはんをしっかりとりましょう。生活リズムを整えていくことで登校しやすくなります。 また、学校に行こうとがんばるものの、心もからだも疲れ切って思うように動けない人もいると思います。今、学校に行けなくなっている自分を責めないようにしてください。 新型コロナウイルス感染症の終息見通しが立たず、将来のことが不安になったり現在の生活にもストレスを感じたりすることがあるかもしれません。思っていることを話してみると気持ちが楽になることもあります。 そして、好きなことや没頭できることがあれば、ぜひやってみてください。 勇気や意欲が出てきたら、次のステップに進んでいけるといいですね。 もし所属する学校に行けなくても、いろいろな道があり、選んでいくことができます。不登校を経験した魅力的な大人の方は沢山おられます。一番大切なことは、あなたが幸せになることです。一人で抱え込まず、迷うことや困ることがあれば信頼できる人に相談しましょう。 生き方は人それぞれです。 あなたらしく過ごせる、あなたの道を見つけていけるといいですね。 ご家族へ ありのままの子どもを受け入れて 焦らず寄り添ってあげて 自分も子どもも追い込まないように 親自身が楽しみ幸せを感じて 子どもが自信を取り戻すのを待とう ありのままを受け入れる まずは、子どもの気持ちを理解して受け入れることが大切です。話をじっくり聞いて、うんうん、そうだね、しんどかったね、がんばってきたんだねと。 傷ついた心を癒すためには、自分が受け入れられている、信じてもらっているとの基本的信頼感の充足が必要です。お母さんお父さんが、どんな自分も丸ごと受け入れてくれているという思いは何と心強いことでしょう。親の子を信頼する優しい眼差しは、子にとって安心して自分や他人を信じる気持ちを育みます。 ベッドに横たわり何もしていないように見えても、頭の中はいろいろ考え、もがき苦しんだり、心の中は葛藤で悩んでいたりします。人生にとって、前に進むための準備だったり、エネルギーを貯める時間であったりするかもしれません。 もし、子どもが辛い言葉を発した場合には、子どもの苦しさや置かれた状況がそうさせていると捉えて、反応しすぎないようにしましょう。私たち大人は、子どもに対し、あなたのため、あなたを思って、将来のために、と言いながら、私たちの考えを押し付けがちです。そして何とかしないといけないと一生懸命になりすぎて反応がないとショックを受けたり怒ってしまったり。よくよく考えると、大人がこうしてほしいという勝手な理想だったり、こうあるべきとこだわっていたりすることも多いと思います。 苦しい時は時間が長く感じますが、親も子も成長できるいい機会ととらえ、干渉しすぎず、家での役割分担など子どもに任せてみてはいかがでしょうか。自分に出来ることがあり、親が喜んでくれることは、子どもにとって嬉しく勇気づけられるものだと思います。 そして、子どもと過ごせる、かけがえのない今この時を大切にしながら、あなたは大丈夫!信じてる!応援してる!というメッセージを送り続けてください。 親自身の楽しみを 自分のことで大切な両親や家族が喧嘩している、または学校と対立している姿を見るのは、本人にとって、とても辛いことでさらに傷ついてしまいます。取り巻く大人の方針は、ある程度違いはあっても相反することがないようにしたいものです。 周りの大人たちは、応援者として協力体制を築き、本人が安心できる環境を整えるようにしてください。 そして、アドラー心理学でいう「課題の分離」も必要です。子どもの不登校に親は悩みますが、学校に行くか行かないかは子どもの課題であり、イライラや不安とどう向き合うかは親の課題となります。 親御さんは心穏やかでいられるようご自身のケアをしながら、仕事や趣味に力を注ぎ、自らの人生を楽しんでください。世の中、そんなに悪くないよ、楽しいこともあるよ、いろいろな生き方があるよと。コロナで大変な思いをしたけれど、これを機に工夫をしながら前を向いて進んでいく姿は、きっと彼らに勇気と元気を与えることでしょう。 親や周りの大人たちは、深い愛と広い心を持って子どもを尊重し、自らも生き生きと過ごしていきたいものです。 このような安心できる環境の中で、子どもたちは少しずつ自信を取り戻し、何かやってみよう、チャレンジしてみようと前に進みやすくなるのではないでしょうか。 皆さまが幸せに過ごせますように。 |
2020年6月28日(日) |
休校明けのあなたへ |
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緊急事態宣言が解除され、6月から本格的に学校が再開する子どもたちも多いと思います。 生活リズムや体調はどうですか? 未知の新型コロナウイルス感染症のまん延は、大人の生活や社会だけでなく、子どもたちの日常を一変させてしまいました。 突然休校や外出自粛となり、友達とも会えず、外で自由に遊べず、行動が制限された生活となり、悲しかったり、辛かったり、イライラしたり、我慢することも多かったのではないでしょうか。 大変な中、今まで本当によくがんばったと思います。 この数か月、人との関わり方を始め、あらゆるものが今までのようにはいかなくなりました。ずっと家にいて自由にならないことも多かったでしょうが、変わりゆく世の中や生活を通して、不自由さからじっくり考えたり学んだり、工夫したこともあるでしょう。 やってきたこと、それなりに過ごしてきたこと、苦労したことは、決して無駄にはならないと思います。 この時期をこらえた経験は、きっとあなたの力になり、将来役に立つことでしょう。 そして、家での生活に慣れ、外に出たり学校に行くことに不安や怖さを感じている人もいると思います。この状況で不安や恐怖を感じるのは当たり前の感情でもあります。 焦らず、少しずつご自分のペースで戻していきましょう! しばらくウイルスとは付き合っていかなければならないため、活動の仕方にも変更や工夫が必要になります。 慣れない生活に疲れを感じたら、からだを動かしたり好きなことをしてリフレッシュやリラックスしたりして、夜はしっかり休んでください。 そして、困っているとき、こころやからだの調子がいつもと違うときには、一人で抱え込まずに信頼できる大人に相談してください。 話をすることで気持ちが楽になるとともに、あなたの思いや意見が参考になり、環境がより整う可能性もあります。 あなたたちの柔軟な考えや創意工夫したこともぜひ発信してみてくださいね。 最後に 今までがんばってきた自分を褒めてあげよう。 そして、これからも自分と周りの人を大切に、自分らしく過ごそう! |
2020年5月31日(日) |
「コロナうつ」にならないために |
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4月7日、7都道府県に出された新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言は4月16日には全国に広げられ、外出自粛の生活が続いています。 休校や休業、在宅勤務で家にいる時間が長くなり、また多くの活動が休止となり、不自由な生活にストレスがたまっていませんか? 受診される方の中には、感染への恐怖、出口が見えない不安、現状や今後の心配から強いストレスを感じ、こころやからだの不調を訴えられることも多くなってきました。 このような危機的状況下では、不安や恐怖を感じることは当たり前ではありますが、ストレスが長引くことで、うつ状態・うつ病への移行に注意が必要です。 「コロナうつ」にならないために 行動(生活スタイル)や認知(考え方)を工夫して、こころとからだの健康を保ち「コロナうつ」を予防しましょう。 1、「外出自粛生活」ルーチン&お楽しみでアクセントを *ルーチンをこなす〜規則正しい生活と日課 休校が2ヶ月も続くと、だれてしまったり運動不足で寝付きにくくなったりしがちです。 朝はいつも通り起きて、朝食をとったら外に出て、通学、通勤のつもりで30分くらいウォーキングしましょう。日に浴びながら運動すると、セロトニンが活性化し、気持ちが安定するとともに、夜、眠りやすくなります。 大まかな日課を作り、学習や在宅ワークの方は、1時間に1回程度ストレッチなどで休憩。子供と一緒の場合には、時間を区切ったり目安を作り、楽しみを後にもってくるといいかもしれません。 思春期以降の子どもには、提案や声かけはしても、介入しすぎず、お互いにプライベートな時間や空間で適度な距離感を保つようにしましょう。 大人も子どもも、自粛疲れでイライラしやすくなりがちですが、相手の気持ちを想像し、いたわりの気持ちがもてるとこころの余裕が生まれます。 *お楽しみリストをつくる 自宅でできる楽しいこと、気分転換や元気がでること、やっておきたいことリストを作る。短時間で手軽にできること、時間をかけて取り組むこと、一人ですること、家族と一緒に楽しめることなど、どんな些細なことでも、リストアップしておきます。食卓の雰囲気を変えてみたり、ティータイムは場所を変えてベランダやガーデンカフェにしてみるなど「おうちご飯」「おうちカフェ」を楽しい時間にするのもいいかもしれません。頑張っているご褒美に美味しいお菓子とか、ビール1杯とか、いろんなバージョンがあると楽しめます。 *おうちご飯の工夫 感染防止として買い物の回数を減らすために、日持ちのする方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。買ってきた肉、魚、野菜を塩麹、西京漬け、粕漬、ぬか漬けなどにしておくと、栄養価も高く、さまざまな味が楽しめて長持ちします。植物性乳酸菌により腸内環境が良くなり、免疫力アップにもつながります。また、買ってきた食材や作ったものを真空パックや冷凍保存にしておくのもいいかもしれません。今は便利な商品もあるので、この機会に活用してみるのもいいですね。 *無心になれることをする 何か一つのことに集中すると頭のゴタゴタが消えて無心になれます。マインドフルネスや坐禅にあるような「今ここに集中する」ことで心穏やかになります。 塗り絵、刺繍、物づくりなどの他、床みがきなどの掃除や片づけ、庭仕事に集中する。このように無心になれる時間を持つことは、こころの健康にとって大切です。 最近、家にあった布で作ったと素敵な柄の手作りマスクをつけて来院される方も多くなりました。必要に迫られてということでもあると思いますが、無心に裁縫することでこころの癒しになるとともに出来上がりの楽しみや達成感もあり、一石二鳥ですよね。 2、感情のやり場がなくなったら 感染拡大に伴う影響が各年代や各方面で広がり、それぞれの立場で苦労し耐えながら過ごしておられる方も多いと思います。最初は家族が家にいることが嬉しくても、長引くにつれ、不自由な生活が続くことで疲れがでてしまいがちです。 悲しい、不安、怒り、イライラなど負の感情を抑え続けると、からだやこころの不調につながりやすいので、感情を受け止めつつ適切に処理をしていきましょう。 *アンガーマネジメントで怒りの感情をコントロール 家族との間で怒りの感情が爆発しそうになったら、相手との距離をとり(違う部屋やトイレに駆け込むのでもいい)できれば感情を客観視し冷静になる時間を稼ぎます。 怒りといっても、「いい加減にして!」「思う通りにしてくれない」「私のことわかってくれない」「自分ばっかり」など、相手や出来事といった外的要因のみならず、それをどう感じるかという自分自身の感情になります。 期待や現実にズレがあったり、自分の信条が裏切られた時に許せない気持ちになりがちです。「こうするべき」との価値観は人によって異なるので、相手の価値観を認めつつ、自分の許容範囲や視野を広げられる(これもありかな。この程度なら仕方ないかな)とよいですよね。 アンガーマネジメントでは、怒りのピークは6秒と言われており、言わなくてもいいことを言ったり、手が出そうになったりするのを防ぐために、イラっときたりカッとなったりしたときには、まず深呼吸して「大丈夫」と唱えて、最初の6秒間やり過ごす方法があります。 怒りの感情をコントロールできるようになれば、エネルギーの消耗も減り、ストレスも溜まりにくくなります。 *感情を上手に表現しよう 感情を適切に表現・処理する方法としては、まずは自分の不安な感情を言葉で表現(言語化)したり、さまざまな自己表現、行動をおこす方法があります。 自分の気持ちを信頼できる人に話せるとよいですが、今は会って喋ることができないのでSNSを通して気持ちを共有することで気分が少しでも楽になります。自分の気持ちを日記やスマホなどに記すことで感情を言語化・客観視でき、心が落ち着けることもあります。 また、何かに夢中になる、行動をおこす(目先が変わると気分をリセットできる場合があり、部屋を変えたりを外を眺めたり運動したりする)のも役立ちます。 安心して話せる人がおらず、感情がうまく処理できないようでしたら、専門家に話をするのも一つの方法です。 3、人とのつながりを維持する 感染防止のために、人との物理的距離はとらねばならないですが、電話、SNS,ネットで人とつながることはできます。若い方は、今までにもネットで繋がることは自然としてこられたでしょうし、社会人の方はオンライン飲み会などを楽しんでおられるかもしれません。 一方で、年配の方は、人との接触が途絶え孤独になると、うつ気分や認知機能の低下を生じやすくなるため注意が必要です。 私も先日、初めてWeb会議に参加しましたが、家にいて繋がれることは便利で、こんな時だからこそ、同志と意見交換したり不安を共有し合えるのは、とても有難たく、安心感も得られます。 人との付き合い方は人それぞれなので、自分に合った方法で緩やかに維持できるとよいのではないでしょうか。 4、運動〜体力・筋力低下予防 外出自粛とともに今まで行っていたスポーツが休止となり、運動不足になっておられる方も多いと思います。身体を動かすと筋力維持のみならずリフレッシュにもなり、心身の健康を維持するために重要です。制限はあるもののご自分に合った運動を心がけましょう。 *家の中でできる体操、ストレッチや筋トレ 全身の筋肉を動かすラジオ体操やストレッチ、下肢の筋肉を維持するスクワットは家で手軽にでき、お勧めです。最近は、スポーツ選手などによる工夫のこらした動画配信もあるので、参考にしてみるのもいいかもしれません。 *ウォーキングやジョギング 外出自粛の中、3密を避けたウォーキングやジョギングは可能とされています。青空の下、日を浴びながら体を動かすことで、リフレッシュにもなります。 静止時には他人との物理的距離を2mとるよう求められていますが、運動中に飛沫がどのように拡散するか調べた欧州の研究チームは ウォーキングでは4〜5m ジョギングでは10m サイクリングでは20m離れる必要があるとしています。 このようなことから、人の集まる公園やコースを避け、家の近くを一人か二人で行うのがよいと思います。私自身も、昼休みにクリニック近くの住宅地や島田緑地周辺を散歩し、運動不足の解消と気分転換になっています。 5、深呼吸、リラクセーション 気持ちが行き詰まってきたら、庭やベランダに出て、空を見上げながら胸を広げて深呼吸(鼻から4秒息を吸って口をすぼめて8秒かけてゆっくり吐く)をしてみましょう。深呼吸や腹式呼吸をしながら肩の力を抜きます。上肢や下肢の筋肉も緩めて全身の力を抜いてリラクセーションすると、自律神経も整いやすくなります。 そして、「青空がきれい」「空気が美味しい」「自分はがんばってる」「今日も元気に過ごせた」等、自分に優しい肯定的な言葉を発すると、リラックスできるとともに気持ちも前向きになれます。 6、心の持ち方 ・他者への寛容さ〜こんな時だから、お互いを敬い、力を合わせよう 感染拡大を阻止しなければいけないとの共通目標はあるものの、置かれた立場や状況が異なり、さまざまな意見や感じ方があります。傷つけたり攻撃し合ったりすることは避け、自分を大切にするとともに、他人のことも理解するようにしましょう。 ・想像力を働かせる〜異なる価値観や立場の方に思いを馳せる 一人でいるのもしんどいし、家族とずっと顔を突き合わせているのもしんどくなってくる。感染リスクを負いながら仕事をするのもしんどいし、ペースを保ちづらい在宅勤務もしんどい、経済不安を抱えながら休業要請に従うのもしんどい。大人も子どもも、皆がそれぞれの立場でしんどさを抱え、今までと違う生活に耐え、がんばっています。 苦難な時だからこそ、想像力を働かせ、お互いの価値観を認め合い、皆で協力して乗り越えていきたいものです。 ・がんばりすぎない ウイルスとの闘いは長期化が予想され、当面、ウイルスと共存しながら自らと家族を守っていく必要があります。がんばりすぎると、こころもからだも疲れてしまいます。適度に手を抜きながら、また楽しみも入れながら長続きする方法を工夫していきましょう。疲れを感じたらゆっくり休みましょう。 子どものいいところ、好きなところを認めてあげる。長い自由時間を好きなように過ごすのも貴重な経験と思うようにしてみてはどうでしょうか。いい親でなければと思わず、肩の力を抜いて理想と現実のギャップを受け入れる。時には同じ目線で楽しむとよいでしょう。 ・今、自分にできることをする 自分でコントロールできないことにとらわれすぎないようにしましょう。改めて何が大事かを考え、欲張らないようにする。忙しかった時には見えなかった、感じなかったことを見たり感じたりできるかもしれません。新しいことを模索してチャレンジしたり、発想転換で変化をもたらすチャンスと前向きにとらえて準備するのもいいかもしれません。 ・感謝の気持ちで前向きに 今まで普通にできたことができない現状を嘆きたくなりますが、当たり前のことに気づいて感謝の気持ちを持てると心穏やかに過ごせるのではないでしょうか。 身近な人に勇気を出して「ありがとう」と笑顔で言ってみませんか。 苦難や苦労、逆境は人を成長させるともいいます。トンネルは必ず抜けます。道は開けます。 今、トンネルの暗闇にいるように感じている方も、希望を捨てずに一緒に歩んでいきましょう。 |
2020年4月29日(水) |