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新年あけましておめでとうございます。 当院では、スタッフ一同、一人でも多くの方が笑顔になっていただけるよう、また地域の皆さまの心の健康を守れますよう丁寧に向き合い、寄り添ってまいります。
・過去を思い返す日が来たときには、
・もし冬がなかったら、
・私には私にしか
(元旦の空高く舞い上がる凧) 偉人のことばには勇気づけられます。 |
2021年1月4日(月) |
うつ病の早期発見、早期治療、適切なケアの重要性〜コロナ禍で若年うつ病の受診が増えています |
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秋も深まり過ごしやすい日もありますが、寒暖差が激しく、自律神経のバランスが崩れやすい時期でもあります。さらに、第3波ともいわれるほど新型コロナウイルス感染が再拡大しており、流行の長期化は、我々にさまざまな制限や不安をもたらし、慢性的なストレスとなっています。 秋田大学の調査によると、学生のほぼ1割に中等度以上のうつ症状がみられたといいます。また、医療ベンチャー「ジャパンイノベーション」の調査では、大学生の44%にうつ病の可能性ありとの驚きのデータが示されています。米国においても、新型コロナウイルス流行がもたらす社会的孤立と機会喪失が、若者の精神衛生とキャリア形成に影を落としており、若者の「コロナうつ」のリスクが増加しているとの指摘があります。 ようやく対面式授業が始まった大学があるものの、友人とも会えず長期にわたり自宅で悶々とオンライン授業を受ける日々は、学生にとってどれだけ辛く孤独なものだったでしょうか。そして経済的な見通しが悪化する中、就職や将来への不安に苛まれている方も多いと思います。 うつ症状のみられる若年層の受診が増加 最近、不安や抑うつ、倦怠感などの心身不調を訴えクリニックを受診される方が多くなりました。特に今年は、例年以上に若い方の受診が目立ちます。 コロナ禍においては、全世代でメンタルヘルスケアが必要ですが、特に若い方のメンタルヘルスケアの重要性を感じます。 どの年代においても一年一年はかけがえのないものですが、特に若年層(10代、20代)にとって、コロナ禍の生活は、思い描く生活や活動ができないことから、喪失感や無力感を強く抱きやすくなります。また、休校措置によって授業や行事が年度後半に重なったことで、時間的かつ精神的な余裕がなくなり、疲れが溜まりやすいともいえます。さらに将来の展望が見えにくく悲観的となったり不安を抱きやすくなったりします。 このような状況下で、うつ状態に陥り受診に至る方が増えています。診察中に涙が溢れだすことも多く、受診するまでに辛さを抱えながら耐えてきたことが窺われます。 個々のケースにもよりますが、睡眠や食事がとれにくい状態が続く場合、思考力も低下しており悪循環を断ち切るため、休養が必要になります。 「うつ」というのは、がんばり続けて消耗・疲弊した状態(エネルギー切れ)のため、がんばろうとしても、がんばれない状態です。 周りの方は、辛さに共感しつつ、今までがんばってきたことを認め、休養の保証をしてあげてください。ご本人は休むことに罪悪感を抱いていることが多いですが、休んでいいと言われることで、ほっとしたり少しでも気が楽になったりするものです。 うつ病とは 日本人のうつ病発症率は13人に1人といわれ、今や誰でもかかり得る疾患です。うつになると、気分が塞ぎ、悲観的な考えとなり、自己否定や罪悪感(自分自身を責める)が出るとともに、疲労感、食欲低下、頭痛、腹痛、睡眠障害などの身体症状も出現します。 うつ病治療は、休養、薬物療法、精神療法、環境調整を組み合わせて行います。ご家族をはじめ周囲の方には、病気を受け入れ、治療や関わり方について正しい知識を持ちサポートしていただくことで、患者さんの回復力を高めていくことができます。 1、うつのサインに気づく 一緒に生活しているご家族だからこそ、ちょっとした変化に気づくことができます。下記のようにいつもと様子が違ったり、気分や体調がすぐれないことが続く場合には、うつ病が関係している可能性がありますので、早めの受診をお勧めします。 日常生活の変化 ・友達と交流しなくなった(SNSを含む) ・好きなことや趣味をしなくなった ・いつもやっていることをしなくなった ・横になったり、ぼーっとしていることが多くなった ・口数が少なく会話が続かなくなった ・ちょっとしたことで怒ったりイライラしたりするようになった ・些細なことを気にするようになった ・身だしなみに気を遣わなくなった 身体症状 ・不眠、だるさ、頭痛、吐き気、めまい、肩こり、動悸、胃のもたれ、腹痛、下痢や便秘など 2、治療をはじめる うつ病になると決断力が低下するため、身体の不調を自覚していても本人自ら行動を起こしにくくなります。精神科や心療内科への受診に抵抗がある場合、まずは、内科などかかりつけ医で相談したり検査したりしてもらう方法もあります。身体に異常がないとわかったことで心療内科を勧めると受診しやすくなる場合もあります。一人で受診するのは不安に感じることも多く、できるだけ付き添ってあげると安心して受診しやすくなります。 3、治療のサポートと関わり方のポイント 急性期:まずは安心してゆっくり休める環境を作ってあげてください。回復を助けるため、脳の働きを調整する抗うつ薬などの薬物療法を行うことが多いため、服薬のサポートをお願いします。不安焦燥や悲観的思考が強い場合も多いですが、心のエネルギーをためることを最優先とし、決して無理をさせずに、温かく見守ってください。判断することが難しい時期でもあるため、決断を性急に求めることは控え、退学・退職など重大な決断は回復するまで先延ばしするようにしましょう。 回復期:治療を始めると少しずつ症状がよくなりますが、症状の波が出ることも多く、よくなったり悪くなったり三寒四温のように少しずつ落ち着いていきます。症状が安定したら、睡眠と生活のリズムを整え、少しずつ活動を増やしていきます。本人の思いを尊重しながら、できることから取り組んでもらうようにしましょう。本人が手伝ってくれたら「ありがとう」の気持ちを言葉で伝えてください。些細なことでも自分が必要とされているという感覚は自尊心を高めます。回復には時間がかかることも多いですが、焦らず、適度な距離を置いて長い目で見守ってください。共倒れにならないようご家族もご自身のサポーターをもったり息抜きするなどしてケアを忘れないようにしましょう。 ご家族の力 うつ病は心の病であり、うつ病治療において、ご家族のサポートは患者さんにとって何よりも大きな支えになります。 辛さのあまり消えてしまいたくなったとき、もう治らないのではないかとあきらめそうになったとき、自分を信じて回復を待ってくれているご家族の想いは、患者さんが病気を克服しようと思う大きな力となります。 時間がかかっても、うつ病は必ず治る病気です。 ご自分のこともいたわりながら、大切な人を支えてあげてください。 参考資料:患者さんの家族のためのうつ病サポートブック 監修 小山司 |
2020年11月23日(月) |
認知行動療法〜しなやかな考え方でうつ気分やストレスを緩和しよう |
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熱中症に注意! 連日、40度近い猛暑が続いています。今年は、酷暑とマスク着用により例年以上に熱中症対策が必要です。 屋外など周囲の人と十分な距離が確保できる場合には、マスクをはずして休憩するようにしましょう。そして、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給をするよう心がけて下さいね。 COVID-19の蔓延 国内で初めて新型コロナウイルスの感染が確認されてから半年以上が過ぎました。この地方でも再び感染が拡大・蔓延しており、8月6日より愛知県独自の緊急事態宣言が発出されるなど一層の警戒が必要です。 当院では、安心安全に受診いただけるよう、スタッフの健康管理および院内の衛生管理に努めております。来院される皆様にも引き続きマスク着用と手指衛生のご協力をお願いいたします。また、来院がご不安な方はお電話でご連絡下さい。 ところで、今回は、認知療法・認知行動療法についてお伝えします。 長引くうつ症状や対人関係の悩み、ストレスを抱えている方、あるいはストレス対策に興味のある方に読んでいただければ幸いです。 ストレスの感じ方には考え方が影響している クリニックには、最近、コロナ禍におけるストレスでうつ気分や不安を抱き受診される方が増えています。また、上司の叱責など職場のストレスや家庭内ストレスが積み重なり、体調を崩される方も多く受診されます。 同じ環境や状況でも、ストレスを感じやすい方、あまり感じない方がいます。 それは、その人の性格や考え方、習慣や今までの体験などが影響していると考えられています。 人間関係で悩んでおられる方は、その人の思考パターン(考え方の癖)や思い込みに影響を受けていることも多いものです。 そして、うつ状態では悲観的な考え方によって憂うつな気分となり、自分は全然価値がないと確信するなど自己破壊的感情に至ることもしばしばあります。 うつ状態のときによく起こる思考・行動パターンには次のようなものがあり、うつ気分との悪循環(うつ病スパイラル)を呈しやすくなります。 否定的認知(マイナス思考)の3つの特徴 落ち込んでいる時には、私たちは自分、周囲、将来の3つに悲観的な考えを持ちやすくなります。 ・自分自身に対して:自分はだめな人間だ、何の力もない ・周囲に対して:周りの人から嫌われている、迷惑がられている ・将来に対して:現状がいつまでも変わらない、この辛さは一生続く うつ状態での行動特徴 ・活動量が減る:楽しいことや達成感が得られず、元気のもとがなくなってしまう→「何もできていない」と自分を責めてしまう ・ぐずぐず主義:先延ばししたり問題を避ける→やらないといけないことがたまってしまう ・周りにうまく助けを求められない 一方、気分がいいときには、思考、気分、行動はいいサイクルで回っていることが多いものです。 認知療法・認知行動療法では、思考(認知)や行動に働きかけることによって、気分が向上することを目指します。 認知療法・認知行動療法とは 「現実の受け取り方」や「ものの見方」を認知といいますが、認知や行動に働きかけて、心のストレスを軽くしていく治療法を「認知療法・認知行動療法」といいます。 自分の考え方(認知のあり方)が、私たちの感情や行動、身体に大きく影響を及ぼすといわれています。 誰しも自分の考えは正しいと思いがちですが、特にうつ状態や不安状態では健康なときに比べ、状況を多面的に解釈することが困難になってきます。 そこで、自分の思考パターン(考え方の癖)に気づいて見直し、バランスのよい考えを取り入れていくことで気持ちが楽になったり問題解決につながったりします。 認知療法・認知行動療法では、「自動思考」と呼ばれる、様々な状況あるいは出来事があった時に瞬間的に浮かぶ考えやイメージに焦点を当てて治療が進められます。 気分は考え方に影響される あなたは職場の上司に「また失敗したのか!」と叱責された際(できごと)、どのような考えが浮かび(自動思考)、どのような気分になりますか(気分)? ・「以前も同じ失敗をした。だめな私」との考えが浮かぶ→憂うつになる ・「あの上司は私ばかりを叱る」との考えが浮かぶ→怒りや不信感がわく ・「次は失敗しないようにしよう。上司は私の将来を期待して言ってくれているのだ」との考えが浮かぶ→希望がわく このように、同じ体験をしても、それをどのようにとらえて考えるかで、そのときに感じる気分は随分違ってきます。そして、身体の反応や行動にも影響します。 「考え方によって気分も変えられる」ということを理解して、自分の思考パターンに偏りや歪みが生じていないか、下記を参考にしてみてください。 思考パターン(認知の偏り) 認知療法家のデビッド・D・バーンズは、うつ病を引き起こす認知の歪みを次のように「10の思考パターン」に分類しています。 1、全か無か思考 物事を白か黒か、○か✕か、どちらかはっきりさせないと気が済まない、非効率なまで完璧を求める極端な思考。「営業成績はいつも一番でないと意味がない」と考える 2、一般化のしすぎ 一度か二度起こった事実をみて「全てこうだ」と思い込んで一般化し、この先もずっとそうであると否定的な結論を下す。一つうまくいかないと「自分は何一つ仕事が出来ない」と考える 3、心のフィルター(選択的抽象化) 良いこともたくさん起こっているのに、物事の悪い面ばかりに注意が向き、良い面が見えなくなってしまう。良いことは無視して、世の中真っ暗だと落ち込む 4、マイナス化思考 何でもないことや良い出来事を悪い方に解釈して、マイナスに置き換えてしまう。仕事がうまくいっても「これは気まぐれだ」と考える 5、結論の飛躍 わずかな相手の言動から、勝手に相手の心を読みすぎ結論を下す、あるいは、根拠もないのに悲観的な将来の結論に飛躍する。相手から褒められたのに「口では褒めているけれど、内心はばかにしているに違いない」と決めつける 6、拡大解釈と過小評価 欠点や失敗を大げさに考え、長所や成功は小さく評価してしまう。些細なミスで失敗すると「なんて無能だ」と拡大解釈し、成功しても「こんなことはたいしたことでない」と過小評価する 7、感情的決めつけ 自分の感情をあたかも物事の真実である証拠のように考える。「何の希望もないように感じる。だから私の今の問題は全く解決不能だ」と結論づける 8、すべき思考 何事にも「こうすべきだ」「こうすべきでない」「こうしなければならぬ」と考え、厳しい基準を作り上げ、柔軟な対応ができない。「絶対に〜」と必要以上にプレッシャーを与え、自分自身を追い詰めてしまう。すべき思考を相手に向けると、自分の思い通りでないことにイライラするなどフラストレーションを感じる 9、レッテル貼り 自分や相手にレッテルを貼り、それを固定してしまう。ミスをした時に「自分は落伍者だ」とレッテルを貼り、部下がちょっとしたミスをすると「あいつは能力がない人間だ」とレッテルを貼り、決めつけてしまう 10、自己関連づけ(個人化) 良くない出来事を理由もなく自分のせいにしたり、原因を必要以上に自分に関連づけたりして自分を責める。子供の成績が悪いのを「これは私の責任だ。だめな母親だ」と思ってしまう 思い当たる項目はありましたか? 認知の偏りが全くないという方はいないと思います。生まれ持った気質や養育環境、さまざまな体験を通して、その人なりの思考プロセス(考え方)が出来上がっていきます。 自らが陥りやすい認知の偏りを把握しておくとともに、誰もがストレス下やうつ状態では、上記のような思考パターンに陥りやすいことを理解しておくことが重要です。 偏った認知を修正するためには ある状況に置かれた時にどのように考えるかによって、気分も違ってきます。どのような時に偏った考え方をするのか気づけるようになることが大切です。少し立ち止まり、事実に基づいて考え、考えが偏っていないか、違った考えがないかを見つめ直し、バランス思考を導き出していきましょう。 認知療法・認知行動療法では、思考記録表(7つのコラム)を活用して、バランスの良い考え方を身につけていきます。 辛い出来事があったとき、このようなコラムを使って、頭を整理していくことで、気分を改善し、対応策を考えることに役立ちます。 思考記録表(7つのコラム)をつけてみよう 1、状況:最近、辛い気持ちになった時の具体的な出来事 2、気分:その時、自分が感じている気分(%) 3、自動思考:その時、頭に浮かんだ考えやイメージ ↓事実に基づいて考える、認知の偏りに注目、視点を変えてみる 4、根拠:そう考える理由、自動思考を裏付ける事実 5、反証:反対の根拠、自動思考と矛盾する事実 6、適応思考(バランス思考):自動思考に代わる考え(別の考え、視野を広げた考え) 7、心の変化:「気分」をあらためて評価(%) 次のように自分に問いかけて、視点を変えてみて、より現実的でバランスのとれた考えに切り替えていきましょう。 ・他の人が同じ立場にいたら、なんて言ってあげるだろう? ・あの人だったら、どうアドバイスしてくれるだろう? ・元気な時だったら、違う見方をしないだろうか? ・以前、同じような経験があれば、どう対処しただろう? ・自分ではどうしようもないことで、自分を責めていないだろうか? ・見逃しているプラスの事実はないだろうか? このようにして視野を広げてみることで、認知の偏りが修正され、心の変化が生じ(最初に感じた気分が少し楽になり)、前向きな気持ちや行動につながります。 自分のこころの法則(スキーマ)に気づく 自動思考の根本には、思い込みや絶対的信念があるものです。人の考えや行動には、その人なりのパターンがあり、日々の考えや行動に影響を与えています。それは、過去の経験、トラウマ、人間関係、成功、失敗体験などによって作られます。うつ状態では、マイナスの「心の法則」が優勢になり、柔軟な考え方や行動を妨げます。 たとえば、「私は人から嫌われやすい」という心の法則があると、人から連絡がない状況などで「ああ、嫌われた」との自動思考がより出やすくなります。 自分の心の法則や思考パターンに気づいて、一つだけの見方でないことを知りましょう。そして客観的に考えることで、マイナスの自動思考から早く脱出でき、うつ病の再発予防にも役立ちます。 行動へのアプローチ(行動活性化) うつ状態のときは、活動性や意欲が低下し、休養が必要ですが、少し元気が出てきたら、少しずつ達成感や楽しみを感じられる行動を増やしながら行動範囲を広げていくことが重要です。前向きな行動を増やしていくこと(行動の活性化)で、さらに気分の改善も期待できます。 週間活動記録表などを活用し、どのような行動を行った時に気分が良くなるのか、自分自身の現状を観察しながら、焦らず一歩ずつ段階的に活動をアップしていきましょう。 以上、認知療法・認知行動療法について簡単に説明させていただきました。 患者様の疾患や状態によっては、当院で認知行動療法を行うことも可能ですので、診察時にご相談下さい。 また、セルフケアのためにご自身で行う場合、次のようなワークブックやサイトを利用する方法もあります。 書籍:こころが晴れるノート(大野裕) サイト:大野裕の認知行動療法活用サイト「ここトレ」こころのスキルアップ・トレーニング しなやかな考え方で気分が楽になるとともに、抱えている問題やストレスにうまく対応できるようになるといいですね。 参考文献、図書: 厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」うつ病の認知療法・認知行動療法 いやな気分よさようなら デビッド・D・バーンズ |
2020年8月14日(金) |
学校に行けないあなたとご家族へ |
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新型コロナウイルス感染症対策に伴う休校措置が解除され、1ヶ月が経ちました。 学校が再開し、何とか登校しているけれど疲れが出ている方、あるいは、以前から学校に行きづらく、再開に合わせてがんばったものの朝になると体調が悪く登校できない方もおられると思います。 最近、不登校や体調不良を主訴に受診される中高大学生の方が増えてきました。 皆さん、真面目な方ばかり。 そして、学校に行けないことで、自分を責めてしまったり、周りに迷惑をかけている、こんな自分は価値がないと思ってしまったりしています。決してそんなことはありません。 あなたは、あなたなりにがんばってきた。今もがんばろうとしているけれど、これ以上がんばれない、、のではないでしょうか。 学校に行けないから価値がないということは全くありません。何ができて何ができないとかの評価ではなく、あなたの存在そのものが尊いのです。生きていることで親をはじめ他者に喜びを与え貢献しているのです。堂々と胸を張って過ごしてください。 そして、限界を感じたら、一旦立ち止まって休むことも必要です。 今は自信が持てないかもしれませんが、この機会に、自分はこれでいいんだ、こうしたいと思えるような心の基盤を作っていきましょう。きっと、あなたにとってかけがえのない財産になると思います。 不登校の原因 不登校になっている子どもたちは、理由が自分でもわからないとよく言います。友達関係がうまくいかないことがきっかけになっていることも多いですが、学校に行けるなら行きたい。行こうと思って夜に準備をするものの、朝になるとお腹が痛くなったり起き上がれなくなったりします。そして、行けないことを申し訳なく思っていることが多いものです。 不登校の原因は人それぞれですが、クリニックを受診される多くの方は何らかの傷つきを抱え、心身疲弊状態になっています。 過剰適応といえるぐらい、がんばり続けて心身不調に陥っている場合や、いじめなどトラウマ的体験が積み重なり自己否定が強くなっている場合もあります。 心の傷は目に見えず、本人にも自覚がないことも多いため、わかりづらいですが、身体の傷と同じように、傷が癒えるのを待ったり手当てしたりすることが必要になります。 また、繊細で周りが気になる人や集団が苦手な人たちにとって学校の現場は、エネルギーを消耗しやすいものです。 そして、夏休み明けなど長期休暇後に登校しづらくなることは今までにも指摘されていましたが、今回の長期休校の影響を受けている人もいるようです。 食事や睡眠がとれない場合には、うつ病などの気分障害圏や精神病圏の可能性もあるので、経過をきちんと見ていく必要があります。また、背景に発達障害や敏感気質の特性を持っている子どもや家庭環境の影響を強く受けている子どもに対しては、周囲の理解や環境を整えるなどの配慮が特に必要になります。 学校に行けなくても 養老孟司さんは「学校では教えない、生きる上で大切なことがある」「私なんて、子どもの時はいわゆる登校拒否でした。登校拒否というと、道を外れた人という認識があると思いますが、私は学校に行かないことをおかしいことだとは思いません。逆に自分で自分の道を歩んで行こうとする印象さえ受ける。集団が頼りにならない、集団が歩んでいる道に違和感を覚えれば自分で何とかするしかないでしょう。それが登校拒否としてあらわれているにすぎません」「学校に行くにしても行かないにしても、あまり思いつめないほうがいい。人間はできることを全てやろうとする悪い癖があります。私はどこかに留保を置いておくことが豊かさにつながると思います」と言っておられます。 あなたへ 大丈夫!何とかなるよ! あなたのことを信じて応援してるよ 自粛生活で睡眠リズムが乱れてしまい、学校再開後もリズムが戻らず、登校しづらくなっている人もいると思います。できるだけ毎日同じ時刻に起きて、朝日を浴びながら身体を動かし、朝ごはんをしっかりとりましょう。生活リズムを整えていくことで登校しやすくなります。 また、学校に行こうとがんばるものの、心もからだも疲れ切って思うように動けない人もいると思います。今、学校に行けなくなっている自分を責めないようにしてください。 新型コロナウイルス感染症の終息見通しが立たず、将来のことが不安になったり現在の生活にもストレスを感じたりすることがあるかもしれません。思っていることを話してみると気持ちが楽になることもあります。 そして、好きなことや没頭できることがあれば、ぜひやってみてください。 勇気や意欲が出てきたら、次のステップに進んでいけるといいですね。 もし所属する学校に行けなくても、いろいろな道があり、選んでいくことができます。不登校を経験した魅力的な大人の方は沢山おられます。一番大切なことは、あなたが幸せになることです。一人で抱え込まず、迷うことや困ることがあれば信頼できる人に相談しましょう。 生き方は人それぞれです。 あなたらしく過ごせる、あなたの道を見つけていけるといいですね。 ご家族へ ありのままの子どもを受け入れて 焦らず寄り添ってあげて 自分も子どもも追い込まないように 親自身が楽しみ幸せを感じて 子どもが自信を取り戻すのを待とう ありのままを受け入れる まずは、子どもの気持ちを理解して受け入れることが大切です。話をじっくり聞いて、うんうん、そうだね、しんどかったね、がんばってきたんだねと。 傷ついた心を癒すためには、自分が受け入れられている、信じてもらっているとの基本的信頼感の充足が必要です。お母さんお父さんが、どんな自分も丸ごと受け入れてくれているという思いは何と心強いことでしょう。親の子を信頼する優しい眼差しは、子にとって安心して自分や他人を信じる気持ちを育みます。 ベッドに横たわり何もしていないように見えても、頭の中はいろいろ考え、もがき苦しんだり、心の中は葛藤で悩んでいたりします。人生にとって、前に進むための準備だったり、エネルギーを貯める時間であったりするかもしれません。 もし、子どもが辛い言葉を発した場合には、子どもの苦しさや置かれた状況がそうさせていると捉えて、反応しすぎないようにしましょう。私たち大人は、子どもに対し、あなたのため、あなたを思って、将来のために、と言いながら、私たちの考えを押し付けがちです。そして何とかしないといけないと一生懸命になりすぎて反応がないとショックを受けたり怒ってしまったり。よくよく考えると、大人がこうしてほしいという勝手な理想だったり、こうあるべきとこだわっていたりすることも多いと思います。 苦しい時は時間が長く感じますが、親も子も成長できるいい機会ととらえ、干渉しすぎず、家での役割分担など子どもに任せてみてはいかがでしょうか。自分に出来ることがあり、親が喜んでくれることは、子どもにとって嬉しく勇気づけられるものだと思います。 そして、子どもと過ごせる、かけがえのない今この時を大切にしながら、あなたは大丈夫!信じてる!応援してる!というメッセージを送り続けてください。 親自身の楽しみを 自分のことで大切な両親や家族が喧嘩している、または学校と対立している姿を見るのは、本人にとって、とても辛いことでさらに傷ついてしまいます。取り巻く大人の方針は、ある程度違いはあっても相反することがないようにしたいものです。 周りの大人たちは、応援者として協力体制を築き、本人が安心できる環境を整えるようにしてください。 そして、アドラー心理学でいう「課題の分離」も必要です。子どもの不登校に親は悩みますが、学校に行くか行かないかは子どもの課題であり、イライラや不安とどう向き合うかは親の課題となります。 親御さんは心穏やかでいられるようご自身のケアをしながら、仕事や趣味に力を注ぎ、自らの人生を楽しんでください。世の中、そんなに悪くないよ、楽しいこともあるよ、いろいろな生き方があるよと。コロナで大変な思いをしたけれど、これを機に工夫をしながら前を向いて進んでいく姿は、きっと彼らに勇気と元気を与えることでしょう。 親や周りの大人たちは、深い愛と広い心を持って子どもを尊重し、自らも生き生きと過ごしていきたいものです。 このような安心できる環境の中で、子どもたちは少しずつ自信を取り戻し、何かやってみよう、チャレンジしてみようと前に進みやすくなるのではないでしょうか。 皆さまが幸せに過ごせますように。 |
2020年6月28日(日) |
休校明けのあなたへ |
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緊急事態宣言が解除され、6月から本格的に学校が再開する子どもたちも多いと思います。 生活リズムや体調はどうですか? 未知の新型コロナウイルス感染症のまん延は、大人の生活や社会だけでなく、子どもたちの日常を一変させてしまいました。 突然休校や外出自粛となり、友達とも会えず、外で自由に遊べず、行動が制限された生活となり、悲しかったり、辛かったり、イライラしたり、我慢することも多かったのではないでしょうか。 大変な中、今まで本当によくがんばったと思います。 この数か月、人との関わり方を始め、あらゆるものが今までのようにはいかなくなりました。ずっと家にいて自由にならないことも多かったでしょうが、変わりゆく世の中や生活を通して、不自由さからじっくり考えたり学んだり、工夫したこともあるでしょう。 やってきたこと、それなりに過ごしてきたこと、苦労したことは、決して無駄にはならないと思います。 この時期をこらえた経験は、きっとあなたの力になり、将来役に立つことでしょう。 そして、家での生活に慣れ、外に出たり学校に行くことに不安や怖さを感じている人もいると思います。この状況で不安や恐怖を感じるのは当たり前の感情でもあります。 焦らず、少しずつご自分のペースで戻していきましょう! しばらくウイルスとは付き合っていかなければならないため、活動の仕方にも変更や工夫が必要になります。 慣れない生活に疲れを感じたら、からだを動かしたり好きなことをしてリフレッシュやリラックスしたりして、夜はしっかり休んでください。 そして、困っているとき、こころやからだの調子がいつもと違うときには、一人で抱え込まずに信頼できる大人に相談してください。 話をすることで気持ちが楽になるとともに、あなたの思いや意見が参考になり、環境がより整う可能性もあります。 あなたたちの柔軟な考えや創意工夫したこともぜひ発信してみてくださいね。 最後に 今までがんばってきた自分を褒めてあげよう。 そして、これからも自分と周りの人を大切に、自分らしく過ごそう! |
2020年5月31日(日) |
「コロナうつ」にならないために |
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4月7日、7都道府県に出された新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言は4月16日には全国に広げられ、外出自粛の生活が続いています。 休校や休業、在宅勤務で家にいる時間が長くなり、また多くの活動が休止となり、不自由な生活にストレスがたまっていませんか? 受診される方の中には、感染への恐怖、出口が見えない不安、現状や今後の心配から強いストレスを感じ、こころやからだの不調を訴えられることも多くなってきました。 このような危機的状況下では、不安や恐怖を感じることは当たり前ではありますが、ストレスが長引くことで、うつ状態・うつ病への移行に注意が必要です。 「コロナうつ」にならないために 行動(生活スタイル)や認知(考え方)を工夫して、こころとからだの健康を保ち「コロナうつ」を予防しましょう。 1、「外出自粛生活」ルーチン&お楽しみでアクセントを *ルーチンをこなす〜規則正しい生活と日課 休校が2ヶ月も続くと、だれてしまったり運動不足で寝付きにくくなったりしがちです。 朝はいつも通り起きて、朝食をとったら外に出て、通学、通勤のつもりで30分くらいウォーキングしましょう。日に浴びながら運動すると、セロトニンが活性化し、気持ちが安定するとともに、夜、眠りやすくなります。 大まかな日課を作り、学習や在宅ワークの方は、1時間に1回程度ストレッチなどで休憩。子供と一緒の場合には、時間を区切ったり目安を作り、楽しみを後にもってくるといいかもしれません。 思春期以降の子どもには、提案や声かけはしても、介入しすぎず、お互いにプライベートな時間や空間で適度な距離感を保つようにしましょう。 大人も子どもも、自粛疲れでイライラしやすくなりがちですが、相手の気持ちを想像し、いたわりの気持ちがもてるとこころの余裕が生まれます。 *お楽しみリストをつくる 自宅でできる楽しいこと、気分転換や元気がでること、やっておきたいことリストを作る。短時間で手軽にできること、時間をかけて取り組むこと、一人ですること、家族と一緒に楽しめることなど、どんな些細なことでも、リストアップしておきます。食卓の雰囲気を変えてみたり、ティータイムは場所を変えてベランダやガーデンカフェにしてみるなど「おうちご飯」「おうちカフェ」を楽しい時間にするのもいいかもしれません。頑張っているご褒美に美味しいお菓子とか、ビール1杯とか、いろんなバージョンがあると楽しめます。 *おうちご飯の工夫 感染防止として買い物の回数を減らすために、日持ちのする方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。買ってきた肉、魚、野菜を塩麹、西京漬け、粕漬、ぬか漬けなどにしておくと、栄養価も高く、さまざまな味が楽しめて長持ちします。植物性乳酸菌により腸内環境が良くなり、免疫力アップにもつながります。また、買ってきた食材や作ったものを真空パックや冷凍保存にしておくのもいいかもしれません。今は便利な商品もあるので、この機会に活用してみるのもいいですね。 *無心になれることをする 何か一つのことに集中すると頭のゴタゴタが消えて無心になれます。マインドフルネスや坐禅にあるような「今ここに集中する」ことで心穏やかになります。 塗り絵、刺繍、物づくりなどの他、床みがきなどの掃除や片づけ、庭仕事に集中する。このように無心になれる時間を持つことは、こころの健康にとって大切です。 最近、家にあった布で作ったと素敵な柄の手作りマスクをつけて来院される方も多くなりました。必要に迫られてということでもあると思いますが、無心に裁縫することでこころの癒しになるとともに出来上がりの楽しみや達成感もあり、一石二鳥ですよね。 2、感情のやり場がなくなったら 感染拡大に伴う影響が各年代や各方面で広がり、それぞれの立場で苦労し耐えながら過ごしておられる方も多いと思います。最初は家族が家にいることが嬉しくても、長引くにつれ、不自由な生活が続くことで疲れがでてしまいがちです。 悲しい、不安、怒り、イライラなど負の感情を抑え続けると、からだやこころの不調につながりやすいので、感情を受け止めつつ適切に処理をしていきましょう。 *アンガーマネジメントで怒りの感情をコントロール 家族との間で怒りの感情が爆発しそうになったら、相手との距離をとり(違う部屋やトイレに駆け込むのでもいい)できれば感情を客観視し冷静になる時間を稼ぎます。 怒りといっても、「いい加減にして!」「思う通りにしてくれない」「私のことわかってくれない」「自分ばっかり」など、相手や出来事といった外的要因のみならず、それをどう感じるかという自分自身の感情になります。 期待や現実にズレがあったり、自分の信条が裏切られた時に許せない気持ちになりがちです。「こうするべき」との価値観は人によって異なるので、相手の価値観を認めつつ、自分の許容範囲や視野を広げられる(これもありかな。この程度なら仕方ないかな)とよいですよね。 アンガーマネジメントでは、怒りのピークは6秒と言われており、言わなくてもいいことを言ったり、手が出そうになったりするのを防ぐために、イラっときたりカッとなったりしたときには、まず深呼吸して「大丈夫」と唱えて、最初の6秒間やり過ごす方法があります。 怒りの感情をコントロールできるようになれば、エネルギーの消耗も減り、ストレスも溜まりにくくなります。 *感情を上手に表現しよう 感情を適切に表現・処理する方法としては、まずは自分の不安な感情を言葉で表現(言語化)したり、さまざまな自己表現、行動をおこす方法があります。 自分の気持ちを信頼できる人に話せるとよいですが、今は会って喋ることができないのでSNSを通して気持ちを共有することで気分が少しでも楽になります。自分の気持ちを日記やスマホなどに記すことで感情を言語化・客観視でき、心が落ち着けることもあります。 また、何かに夢中になる、行動をおこす(目先が変わると気分をリセットできる場合があり、部屋を変えたりを外を眺めたり運動したりする)のも役立ちます。 安心して話せる人がおらず、感情がうまく処理できないようでしたら、専門家に話をするのも一つの方法です。 3、人とのつながりを維持する 感染防止のために、人との物理的距離はとらねばならないですが、電話、SNS,ネットで人とつながることはできます。若い方は、今までにもネットで繋がることは自然としてこられたでしょうし、社会人の方はオンライン飲み会などを楽しんでおられるかもしれません。 一方で、年配の方は、人との接触が途絶え孤独になると、うつ気分や認知機能の低下を生じやすくなるため注意が必要です。 私も先日、初めてWeb会議に参加しましたが、家にいて繋がれることは便利で、こんな時だからこそ、同志と意見交換したり不安を共有し合えるのは、とても有難たく、安心感も得られます。 人との付き合い方は人それぞれなので、自分に合った方法で緩やかに維持できるとよいのではないでしょうか。 4、運動〜体力・筋力低下予防 外出自粛とともに今まで行っていたスポーツが休止となり、運動不足になっておられる方も多いと思います。身体を動かすと筋力維持のみならずリフレッシュにもなり、心身の健康を維持するために重要です。制限はあるもののご自分に合った運動を心がけましょう。 *家の中でできる体操、ストレッチや筋トレ 全身の筋肉を動かすラジオ体操やストレッチ、下肢の筋肉を維持するスクワットは家で手軽にでき、お勧めです。最近は、スポーツ選手などによる工夫のこらした動画配信もあるので、参考にしてみるのもいいかもしれません。 *ウォーキングやジョギング 外出自粛の中、3密を避けたウォーキングやジョギングは可能とされています。青空の下、日を浴びながら体を動かすことで、リフレッシュにもなります。 静止時には他人との物理的距離を2mとるよう求められていますが、運動中に飛沫がどのように拡散するか調べた欧州の研究チームは ウォーキングでは4〜5m ジョギングでは10m サイクリングでは20m離れる必要があるとしています。 このようなことから、人の集まる公園やコースを避け、家の近くを一人か二人で行うのがよいと思います。私自身も、昼休みにクリニック近くの住宅地や島田緑地周辺を散歩し、運動不足の解消と気分転換になっています。 5、深呼吸、リラクセーション 気持ちが行き詰まってきたら、庭やベランダに出て、空を見上げながら胸を広げて深呼吸(鼻から4秒息を吸って口をすぼめて8秒かけてゆっくり吐く)をしてみましょう。深呼吸や腹式呼吸をしながら肩の力を抜きます。上肢や下肢の筋肉も緩めて全身の力を抜いてリラクセーションすると、自律神経も整いやすくなります。 そして、「青空がきれい」「空気が美味しい」「自分はがんばってる」「今日も元気に過ごせた」等、自分に優しい肯定的な言葉を発すると、リラックスできるとともに気持ちも前向きになれます。 6、心の持ち方 ・他者への寛容さ〜こんな時だから、お互いを敬い、力を合わせよう 感染拡大を阻止しなければいけないとの共通目標はあるものの、置かれた立場や状況が異なり、さまざまな意見や感じ方があります。傷つけたり攻撃し合ったりすることは避け、自分を大切にするとともに、他人のことも理解するようにしましょう。 ・想像力を働かせる〜異なる価値観や立場の方に思いを馳せる 一人でいるのもしんどいし、家族とずっと顔を突き合わせているのもしんどくなってくる。感染リスクを負いながら仕事をするのもしんどいし、ペースを保ちづらい在宅勤務もしんどい、経済不安を抱えながら休業要請に従うのもしんどい。大人も子どもも、皆がそれぞれの立場でしんどさを抱え、今までと違う生活に耐え、がんばっています。 苦難な時だからこそ、想像力を働かせ、お互いの価値観を認め合い、皆で協力して乗り越えていきたいものです。 ・がんばりすぎない ウイルスとの闘いは長期化が予想され、当面、ウイルスと共存しながら自らと家族を守っていく必要があります。がんばりすぎると、こころもからだも疲れてしまいます。適度に手を抜きながら、また楽しみも入れながら長続きする方法を工夫していきましょう。疲れを感じたらゆっくり休みましょう。 子どものいいところ、好きなところを認めてあげる。長い自由時間を好きなように過ごすのも貴重な経験と思うようにしてみてはどうでしょうか。いい親でなければと思わず、肩の力を抜いて理想と現実のギャップを受け入れる。時には同じ目線で楽しむとよいでしょう。 ・今、自分にできることをする 自分でコントロールできないことにとらわれすぎないようにしましょう。改めて何が大事かを考え、欲張らないようにする。忙しかった時には見えなかった、感じなかったことを見たり感じたりできるかもしれません。新しいことを模索してチャレンジしたり、発想転換で変化をもたらすチャンスと前向きにとらえて準備するのもいいかもしれません。 ・感謝の気持ちで前向きに 今まで普通にできたことができない現状を嘆きたくなりますが、当たり前のことに気づいて感謝の気持ちを持てると心穏やかに過ごせるのではないでしょうか。 身近な人に勇気を出して「ありがとう」と笑顔で言ってみませんか。 苦難や苦労、逆境は人を成長させるともいいます。トンネルは必ず抜けます。道は開けます。 今、トンネルの暗闇にいるように感じている方も、希望を捨てずに一緒に歩んでいきましょう。 |
2020年4月29日(水) |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う心身への影響とストレスケア〜作品の紹介とともに |
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国内外で新型コロナウイルス感染が拡大しています。そして、小中高校の休校、イベントや大会の自粛、仕事や経済への影響、マスク不足などの社会的混乱も来たしています。自分が感染しないかとの恐怖や先が見えない不安で気持ちも塞ぎやすいのではないでしょうか。 本日は、体調や心のバランスを崩さないよう、今できるストレスケアについてお伝えしたいと思います。 子どもの心のケア 学校の休校が1週間を過ぎましたが、活動や行動が制限され、いつもと違う生活に大人も子どもも疲れやストレスを感じる頃だと思います。 夜は眠れていますか? ご飯はおいしく食べられていますか? 生活リズムが崩れると自律神経も乱れやすくなります。 特に子どもの場合、ストレスや不安が身体症状(不眠、食欲不振、腹痛など)や行動や感情(いつもより甘える、泣く、わがままになるなど)に出やすくなります。 このような症状がみられたら、まずは安心して落ち着けるよう、感情をありのまま受け止めて親子のコミュニケーションを密にとるようにしてください。親子がともにリズムを作りながら、安心・安全・健康に過ごしていけるよう、ご自身やご家族に合ったストレスケアを心がけていきましょう。 ストレスケア 〜今できること〜 1、睡眠と栄養をしっかりとりましょう 2、起床時間を一定に。朝日を浴びて体操や散歩などで身体を動かし、生活リズムを整えましょう 3、子どもと日課をつくりメリハリをつけ一緒に楽しむ(おうちご飯、物づくりなど) 4、仕事は無理をせず、自分のお楽しみ時間をつくる 5、運動不足にならないよう、自宅でできるストレッチや散歩でリフレッシュ 6、読書やDVD・音楽鑑賞、模様替えなど趣味や好きなこと、やってみたかったことをする 7、ゆっくり呼吸をして気持ちを落ち着かせる(マインドフルネス、瞑想、ヨガなど) 8、現状や不安を受け止めつつ悲観しすぎないようにしましょう 9、情報に振り回されないように 10、いつも以上に自分や家族を大切に 笑うことは免疫力アップにつながります。どんな時でも笑顔を忘れずにいたいものですね。 作品の紹介 こんな時だからこそ、いつもできないことにチャレンジしてみるのもいいかもしれません。 先日、クリニックに通っている患者さんが、作品を持ってきてくださいました。 とても器用な10代のMさん。時折、レジンアクセサリーや人形服のハンドメイド作品を見せて下さっていましたが、今回はなんと自分で着られるアニメキャラクターの服を自作!細かく工夫がなされていて、診察中にも関わらず見入ってしまいました。作品を見ながら説明してくれた笑顔がとても輝いていました。 二作品目は、歌舞伎鑑賞の雑談もされるまで元気になられたSさんの陶芸作品、織部焼のお皿。色合いや形が素敵で上品な仕上がりです。 心のこもった作品にはいつも癒されます。ありがとうございました。 感染予防のための活動自粛と自らの心身健康維持とのバランスをどう保っていくか悩みや課題もあると思います。未だ先が見通せない状況ですが、何か夢中になれること、自分らしく過ごせること、今やれることを大切に、少しでも心穏やかに過ごせるといいですね。 引き続き、受診される皆さまの心身ケア・サポートをさせていただく所存です。ご不安なことがございましたらお気軽にご相談ください。 そしてスタッフ一同、院内感染予防に努めてまいります。熱や咳などのかぜ症状のある方は、直接院内に入らず電話にてご相談いただきますようご協力の程よろしくお願いいたします。 一日も早く収束し平穏な日々が戻ることを心より願っております。 |
2020年3月9日(月) |
謹賀新年 |
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新年あけましておめでとうございます。 新たな年が皆様にとって健やかで笑顔あふれる幸せな年となりますよう心よりお祈り申し上げます。本年もよろしくお願い致します。 当院は今年、移転20周年を迎えます。 この間、クリニックの周辺は徳重駅をはじめ開発が進み、様変わりしました。 先代院長の故武内義哲が開院し46年が経ち、精神科医療を取り巻く状況も変化しました。 令和となり、時代の要請に応えられるよう地域の皆様に信頼いただけるクリニックづくりに努めてまいります。 今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。 |
2020年1月5日(日) |
「もの忘れ検診」〜65歳以上の名古屋市民が対象 |
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今日も高速道路逆走の高齢者ドライバーによる痛ましい交通事故が報道されていました。 高齢になると、目の機能が低下したり、動作反応の機能、特に複数の作業課題を同時に行う能力が低下し、注意力・判断力の低下や操作ミスが起こりやすくなります。 特にアルツハイマー型認知症では、視空間認知機能低下を生じ、空間の位置関係がわかりにくくなるため、運転中に車の位置がわかりづらくなったり、道を間違えやすくなったりします。 相次ぐ高齢ドライバーの不幸な事故がなくなるよう祈るばかりです。 名古屋市で始まる「もの忘れ検診」 今後、高齢化が進み、認知症高齢者は、2025年には全国で約700万人、65歳以上の5人に1人に達すると推計されています。名古屋市では、認知症は誰もがなり得る身近な病気であるという認識のもと、市全体で認知症に関する施策が総合的に推進されています。 そこで、認知症の人を早期に発見して適切な治療や関係機関につなげることや、予防のきっかけとすることを目的に、令和2年1月より65歳以上の市民を対象に「もの忘れ検診」が1年に1回無料で受けられることになりました。 当院は協力医療機関として登録されました 検診内容は、問診による認知機能検査となります。検診ですので、すでに認知症と診断されている方は受けられません。また、簡易的に検査するものであり、認知症の診断を行うものではありません。検診の結果、認知機能低下が認められる場合には、精密検査が行える医療機関へ案内させていただくことになります。 検診希望の方は、令和2年1月より電話にて予約を承りますのでよろしくお願いいたします。 認知症発症予防につながる生活習慣 現在、認知症の決定的な予防法はありませんが、国立長寿医療研究センター長の遠藤英彦先生は、認知症予防の5ヶ条を下記のように示しておられます。 1、生活習慣病の予防 高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、脳血管障害が原因となる血管性認知症を引き起こす。糖尿病では2倍、高血圧では3倍、アルツハイマー型認知症の発症も高くなることが分かっている。よって生活習慣病を予防することは、認知症の予防として重要 2、有酸素運動 生活習慣病を予防するためにも効果的なのが、ウオーキングやランニングなどの有酸素運動。有酸素運動と知的活動を組み合わせた「コグニサイズ」という運動法が効果的。具体的には、足踏みやストレッチ、ウオーキングなどの運動と組み合わせて計算やしりとりをすることで、運動と認知トレーニングを同時に行うとよい 3、日記などの知的活動 何歳になっても頭を使うことが大事。特に定年退職後は家に引きこもらず、人と関わり頭を使うようにする。具体的には日記、語学、楽器、囲碁、将棋、カラオケなど 4、野菜・大豆などを意識した食事 食べるとよいとされているのが、緑黄色野菜、大豆、大豆製品、牛乳、乳製品、海藻類など 5、慢性的なストレスをなくすこと 不和なく笑顔で過ごす 軽度認知障害(MCI)と早期対応 軽度認知障害と診断されても、必ずしも認知症になるわけではありません。国立長寿医療研究センターの研究結果では、MCIの高齢者の4年間追跡調査結果で46%は正常に戻ったといいます。 最近では、MCIが発見されても、食事や運動、生活習慣などを改善することで、認知症への進行を防いだり発症を遅らせたりできることがわかってきました。 長寿の時代、認知症は年を重ねるごとにリスクが高まり、いつ自分や家族がかかるかもしれません。 来年から名古屋市で始まる「もの忘れ検診」。早期に認知機能低下を発見し、生活を見直すことで認知機能の改善や維持が図れるといいですね! |
2019年12月1日(日) |
作品、募集しています♪ 〜折り紙作品の紹介と芸術療法 |
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秋も深まり、この辺りでも木々の葉が色づき始めました。街路樹のトウカエデは緑色から黄色や鮮やかな赤色の紅葉グラデーションがとても綺麗です。 美しい景色を見るように、心のこもった作品を見ることは、心を動かされます。 ところで、クリニックの患者さんには、絵が得意な方、とても器用で刺繍やお裁縫、レジンアクセサリーなど素敵な作品を作られる方、絵手紙や折り紙を楽しまれる方、音楽が好きな方など、さまざまな趣味や芸術センスをお持ちの方が沢山いらっしゃいます。時々、手作り作品を見せていただけるのも、楽しみの一つです。 折り紙作品 今日は、10代の頃から通っておられる患者さんが、気分をワクワクさせてくれるような昆虫・動物ワールドの折り紙作品を持ってきて下さいました。とても表情豊かで、まるで会話したり動きだしたりしそうで、見ていて笑みがこぼれます。Yさんは、作品を作り上げた満足感とともに、喜んでもらえたことでほっとされたようで、笑顔がステキでした。 芸術の力、好きなことに没頭すること、そして表現することの大切さを改めて感じました。 心温まる作品をありがとうございました! クリニック待合室に飾らせていただきますね♪ Yさんの作品 芸術療法(アートセラピー) 作業所・事業所やデイケア・デイサービスなどで作品づくりをされている方もいらっしゃると思います。 芸術療法とは、絵画や粘土細工、写真などの表現手段を利用し、言葉では表現しにくい感情や思いを自分の好きな方法を通して表現する心理療法の一種です。 心のうちを視覚的に表現することで、感情を解放したり、自尊感情を高めたり、意欲の回復にも役立てられるといわれています。表現活動によって、絵画療法、音楽療法、コラージュ療法などがあります。 手先を使って五感を刺激し、脳を活性化させることから、近年では、心理的な病や様々な障害を持つ方のみならず認知症のリハビリテーションにも用いられるようになってきました。 ストレスを感じたら、気持ちを抑え込むのではなく、自分の好きな方法で表現し、発散させ浄化させる。イメージを豊かに創造・想像・表現することで、気づきが得られるかもしれません。 ご自身の関心のある分野で、自分のペースで作業しながら完成するまでのプロセスを楽しむ。そして、思いのまま出来上がった作品を周りの方と一緒に鑑賞することで、心の平穏が得られるといいですね。 作品を作ること、そして観ること。 どちらにも癒し効果があります。 作品を見せていただける方、クリニックブログに載せてもいいという方、どうぞお声をかけて下さいね!皆さまの作品を募集しています♪ |
2019年11月16日(土) |